本橋麻里のカーリング人生変えた衝撃の出会い 人生の中にカーリングがある、という生き様

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もともと私は人に興味がない選手だったんですけど、ロコを立ち上げたときからチームづくりの中で、コミュニケーションを取ること、そしてその根底にまず信頼関係がないと駄目なんだなということを学びました。

ロコはみんなで伝え方を丁寧にしていますし、意識的に練習します。声を荒らげるミーティングもあるんですね。何でも言い合う、感情を出すミーティングも時に必要。そうしたさじ加減は雰囲気を見ながらみんなでつくり上げていく。少人数だからこそ意思疎通は密にできますが、でもそれを意識的にやらないと、氷上でのあうんの呼吸が生まれなかったりします。

「ママさんカーラー」になってよかったのは

──プライベートでは、1児のお母さんですね。

選手としては現在休業中です。トップチームを海外に送り出しながら、新たに立ち上げたセカンドチームのシートを予約して一緒に練習したり、人と会い、企画を練り、チームのスケジュールを見直して必要書類を作成したりなど裏方作業に追われつつ、地域貢献でオホーツクの魅力をPRする活動をしています。カーリングやチームのことをもっと知ってほしくて、声をかけていただければ講演に行ったり、レッスンに出かけたりもします。そのうち選手として復帰できるタイミングがあったらそうしたいな、と思いながら。

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ママさんカーラーになってよかったと思うのは、お節介をしなくなったところ。子どもがよちよち歩きで転びそうになる瞬間にサッと手を出すか、それとも転んでから助けるか。最初は危なっかしいとみると抱き上げていたのですが、その子が経験しないとわからないことを、私が勝手に止めてしまうのはもったいないと思うようになった。子育て中のそんな学びをそのままチームに持ってこられた。

選手が悩んでいるとき、そこで優しい言葉をかけることが、彼女が自然と1つ上のステップに上がろうとするのを妨げてしまう行動だったら、やめようと。相手をまず観察し、相手のためになる言葉やしぐさ、タイミングは何だろうと意識するようになったのは、息子から教わったことかもしれません。

──麻里さんが言うところの“楽しいカーリング”とは?

全力で楽しむカーリング。ロコのスローガンが“故郷から世界へ”で、世界へ行くということは、9割苦しくて楽しいのは1割くらいと腹をくくって、全力を出さないといけない時間のほうが長い。それがトップでやるカーリングの現実です。その苦しい9割をどれだけみんなで楽しめるか。苦しいけど楽しいという瞬間をいかに大事にできるか。

人によって「楽しい」の感じ方は違うと思いますが、カーリングというスポーツを、どれだけ自分の人生を豊かにするツールにできるか、だと思います。そのツールの使い方を今、私は自分の中で面白く変化させることができているので、とても楽しんでいます。

中村 陽子 東洋経済 記者

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なかむら ようこ / Yoko Nakamura

『週刊東洋経済』編集部記者

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