不安がなくなると医療が正常化する
──「メメント・モリ(死を思え)」と言われている感じです。
ベースにあるのは、「どうせ人は死ぬから、それまで楽しく生きればいい」。それが長生きとトレードオフになるのはおかしいので、運動でも酒でもリスクを知って対処すればいいと思っています。
──患者に「死ねば治る!」(笑)。昔からそうだったんですか。
外科医だった頃は、1日でも長生きさせるのが仕事だと思っていた。きっかけはセカンドオピニオン。1998年にイギリス留学から帰ると、日本はセカンドオピニオンなんてとんでもないって雰囲気。ゼロからつくるのが好きなので、喜んでやらせてもらいました(笑)。全国から病気の治らない方が来て、話を1時間聞く。「こんなことで悩んでいるんだ」というのが集積されて今に至っています。10人中9人は適切な治療を受けているのに、本人は不安。「正しいんだよ」と言ってあげるだけで、不安がなくなって、医療が正常化していく。
──不幸な悩みは誤った健康情報からくることもある?
ある。「寝ないとがんになるらしいから寝たいんだけど、寝ても寝た気がしない」とかね。「50歳を超えたら寝た気はしないよ」と言ってあげると安心します。健康情報が氾濫していて、それで不健康になるなんて本末転倒。公共放送も含めて、メディアはある健康法に「悪い」というエビデンス(証拠)がなければ平気で流すから、みんなが右往左往する。こんなのが効くこともあるらしいですよ、くらいにしてくれればいいのに。
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