──みんな死ぬんだってわかる。
そう。「今晩死ぬかもしれないから、おいしいもの食べて帰りなさい」って言うと、「力もらいました」なんて言って帰るよね。吹っ切れる人が多いです。同じだって、共感できるのです。依存性のある睡眠薬の減薬も、昔は「悪いからやめろ」と言っていたけど、それじゃあ共感しない。「ずっと飲むとご利益が減る。そうなると困るでしょ」と言うと控える。
──治らない場合は、症状と付き合うことを告げるのも大事?
そのほうが患者に響く。半分は薬で楽にしよう、半分は自分で治そうね、もしくは死ぬまで治らないよ、と言っています。半分楽になるということで、患者もいろいろと受け入れられるようになる。
「おかげさまで」と言えれば心は健康
──漢方薬も使いますね。
西洋医療で治せない患者に「治せ」と言われ(笑)、漢方の勉強をしました。漢方は10人飲んだら3人効くと思えばいい。ある処方が効かなければ別の処方、ダメならまた別の処方。5つも出せば効くでしょう。
──道具としての漢方に人生経験と話術で患者の心が元気になる。
それと優しさかな。「死ねば治る」に「死ぬまで頑張る」と答えられる人のほうが、あれこれ健康法を考えている人より長生きしていると思う。もちろん健康マニアでも、テレビを見て「またくだらねえことやってんな、この健康法は30点!」って言えるなら心は健康です。1つの指標は「おかげさまで」。症状がよくならなくても「おかげさまで変わりありません」と「まだ治らない」では心の状態が全然違う。医者としてはいかに「おかげさまで」を引き出せるかです。
──そんな医者ばかりでは……。
若い医者は死がわからないので、目の前の病気を治すことを考えちゃう。だから、かかりつけ医にするなら人生相談も可能な年配の医者がいいと思う。患者にその時がきたら、「お迎えがきた」と家族に伝えられる医者。「送ってあげなさい」って。つまり、点滴とか延命措置を何もしない。それでも、最後まで手を尽くすことを選ぶ家族もいるでしょうが、送ってあげればと言われただけで精神的に楽になります。
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