PDCAを回せる人だけが知っている「秘密の技」 周囲の人を助けられる「見識」に到達する方法

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私がコンサルティング会社に入ったときに、部門のデータベースに「Do's and Don'tsページ」があり、そこには先輩や同僚がプロジェクト経験から得た貴重な教訓がびっしりと書き込まれているのを目にしてとても驚きました。中にはまさに「秘伝の技」とでも呼ぶべきものもたくさんありました。どんなものか興味を持たれる方もいると思いますので、一部をご紹介しましょう。

<分析のDo's and Don'ts>
・仮説を持たずにデータをこねくりまわすべからず
・データの入手しやすさで分析軸を選ぶべからず
・異常値を都合のよい拡大解釈に使うべからず。必ず指摘され信頼を失う
・Excelは自動保存を分ごとに設定すべし
・別シートにデータが渡っているときの修正はシートをグループ化しておくこと
<ステークホルダー管理のDo's and Don'ts>
・一度巻き込んだらOKだと思うべからず。相手は心変わりすると心得よ
・伝える内容によって、大広間(役員会議)と小部屋(個別会議)を使い分けるべし
・先に言えば「説明」、後から言ったら「言い訳」と認識される
・どんなに優れた戦略でも信頼関係がなければ受け入れてもらえない。信頼残高を積み上げるべし

こんなふうに、コンサルタントたちが得た教訓を次々に書き込んでいったものです。細かい仕事のノウハウから、プロジェクトの成功に関わる重要なレベルまでさまざまな教訓が書き込まれていました。このように明文化して折に触れて目につくようにしておくことで習慣になります

見識とは実践を経て深く広く得られた学び

書物や情報から得られるものは、あくまでも知識=知っていることです。実践して気づきを得ることで知恵になります。知恵は物事の道理を判断し、適切に処理できる能力です。さらに実践を通じて磨きあげれば、ほかの人も納得するような判断ができる見識になります。

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単にいろいろなことを知っているだけの人は「物知りだね」とは言われますが、頼られることは少ないでしょう。見識とは実践を経て深く広く得られた学びであり、人を助けることができる力です。

PDCAで得られることはゴールの達成はもちろんですが、この見識も大きな価値あるものです。見識は成長や成熟の証しでもあります。就活の採用面接で、「学生時代に打ち込んだことは何ですか?」というよくある質問がありますが、活動の成果を問うているわけではなく、その活動からどんな見識を得たのかが問われているのです。

学びとれることが多い学生は、仕事でも成長する可能性が高いと見られます。若い人に限った話ではなく、何十年も仕事をしているのに見識が浅いとすれば、それは成長が止まっているか、実践から得られた貴重な知恵を見識に高めていない可能性があります。

「何かを学ぶとき、実際にそれを行うことによって我々は学ぶ」 アリストテレス

フロネーシスとは「実践知」と訳され、哲学者アリストテレスが人格を形成するうえでとても重要だとしている概念です。PDCAで得られる実践知を形にして自分と周囲の人に役立つものにしましょう。人生100年時代、さまざまな仕事や職業につく際に、経験から得られた見識こそが、自分が生きていくうえでの技と考えてみてください。

清水 久三子 アンド・クリエイト代表取締役社長・人材育成コンサルタント

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しみず くみこ / Kumiko Shimizu

アンド・クリエイト代表取締役社長・人材育成コンサルタント
大手アパレル企業を経て1998年にプライスウォーターハウスコンサルタント(現IBM)入社。企業変革戦略コンサルティングチームのリーダーとして新規事業戦略立案・展開プロジェクトをリード。「人が変わらなければ変革は成し遂げられない」との思いから専門領域を人材育成分野に移し人事・人材育成の戦略策定・制度設計・導入支援などのプロジェクトをリード。コンサルティングサービス&SI事業の人材開発部門リーダーとして5000人のコンサルタント・SEを対象とした人材ビジョン策定、育成プログラム企画・開発・展開を担いベストプラクティスとして多くのメディアに取り上げられた

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