大学入試で「デジタル試験」導入は可能なのか 安くて判定容易、「紙のテスト」の意外な長所
今年の大学入試がヤマ場を迎えている。2月25日には、国公立大学の前期日程試験が行われる。
大学入試の試験会場の風景は、デジタル時代になった今日でも、日本に大学ができた明治時代や19世紀とほとんど変わらない。受験生は紙に記された問題を紙の答案用紙に書き込み、それを紙の上で採点して合否を判定する。ペーパーテストという点では中国の科挙も同じで、1000年以上前から試験風景は変わっていないといえる。
試験を受ける側も実施する側も、相当な労力を費やしている。デジタル時代となり、ウェアラブル端末が登場して、試験監督者の目を盗んでカンニングが可能になるおそれが新たに出てきた。中国の科挙でもカンニング対策に苦労したといわれるが、現代の大学入試でも、カンニング対策は大きな問題だ。多くの受験生を試験会場に集め、相当数の試験監督者を配して、公正な試験環境を担保して入試を実施している。
ペーパーテストの長所とは
デジタルデバイスが発達した今日、試験を受ける側も実施する側も、徒労に終わらないような方策が考えられないものか。
たしかに、ペーパーテスト以外の方法で入学者を選抜する入試がこのところ増えている。いわゆるAO入試(アドミッションズ・オフィス入試)や推薦入試などである。これらの試験ではカンニングの心配はない。出願はネット経由であり、紙も不要だ。とはいえ、そうした試験は小規模で、やはり入学者の大半は一般入試でペーパーテストを受けている。入学審査のために大量の書類を精査しなければならないのは、入試を実施する側にとって重い負担となる。
ただ、受験生の能力を的確に判別するには、ペーパーテストのほうが容易である。ペーパーテストの長所は、受験生を外界から遮断して他人の助けを借りられないようにして、本人の能力を問うことができる点である。
優秀な受験生を選抜したいわけだから、入試を実施する側が求める能力を持っているか否かを問いたい。他人の助けを借りて解答できてしまうと、その受験生自身がその能力を持つか否かが判別できなくなってしまう。だからこそ、いかなる方法でも他人の助けを借りられないように、試験会場を遮断したうえで、入試を実施している。
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