アップル「機能向上に個人情報は不要」の真意 本社の「プライバシー情報」担当者を直撃

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「近年、“GAFA(グーグル、アップル、フェイスブック、アマゾン)”を、テクノロジー社会を支配する“デジタルプラットフォーマー”であるとして一体化してとらえる議論がある。しかし、われわれはプライバシー保護に関して明確な考え、ポリシーを持っている。決して個人を特定せず、不必要な情報を関連付けず、ユーザーから得られた情報を(広告やクーポンなどの)金銭的価値に転換しないということだ」(アップル担当者)

アップルCEOのティム・クック氏は2018年9月にベルギーで行われた国際プライバシー会議以降、プライバシー情報を基に事業基盤を構築しようとする企業に対し、法的規制が必要であるとの意見を含めて批判を繰り返している。EUの「General Data Protection Regulation(GDPR、一般データ保護規則)」が発効して以来、さまざまな意見が交わされているが、クック氏は「世界のほかの地域もEUに追随するべきだ」と言及している。

プライバシー保護と「利便性や機能向上」の両立は可能

一方でクラウドに集まる情報を基礎にした深層学習などにより、サービス品質を向上させたり、あるいは消費者向け広告の精度を高めることで収益性を高め、より優れたサービスを無償で提供できているという主張もある。

グーグルはクラウドに情報を集め、深層学習などの手法を用いることで、それまで実現できなかったような、高精度の自動化処理ができるとアピールしてきた。

また、約8700万人分の個人情報が政治コンサルタントのケンブリッジ・アナリティカに渡り、米大統領選に影響を与えるという事件が発覚して以降、アップルと険悪な関係となっているフェイスブックのマーク・ザッカーバーグCEOは、高価なデバイスを購入できない利用者にも、広く・薄く情報を収集することで無償でサービスを提供できると、個人情報の活用を正当化してきた。

製品価格に製品やサービスの対価を求めるのか、あるいは広告による無償ビジネスに求めるのかについては、ハードウェアの販売を主な収益源とするアップルと、広告で運営されているグーグル、フェイスブックの意見が交わることはないだろう。

近年、売り上げが伸びているアップルのサービス事業も、利用者数の増加が収益につながっているものの、本質的には自社製品とタイトに統合することで使いやすいサービスを提供することが目的だ。Apple Payのような決済サービスも同様である。

ではアップルが繰り返し主張している「プライバシー保護は、基本的な人権である」というポリシーを守りながら、AIの時代に利便性や機能、性能は向上させていけるのか。アップルの担当者は、“プライバシー保護”と“利便性や機能の向上”は矛盾しないと話した。

アップルは、iPhoneおよびその基本ソフトであるiOSだけでなく、すべての製品・サービスについて、エンジニアは設計段階から“プライバシーが保護されているか”についての監査を受けているという。

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