「車いすラグビー」の想像を絶する激戦の裏側 乙武洋匡が東京大会の雄「池崎大輔」を直撃

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乙武:行政からの補助などは?

池崎:ありません。基本的には自腹か、あるいはスポンサーや所属企業の支援で賄っています。

乙武:日々のトレーニング費用や海外遠征費なども含めて、年間を通してどのくらいのコストがかかっているんですか?

池崎:僕の場合は非常に恵まれた環境で、所属企業にサポートしていただいていますが、自費であればなんだかんだで300万円くらい必要になると思います。今でこそ、こうしてパラリンピック招致が決まって強化費なども振り分けられていますが、それ以前から、自費でこの競技を守ってきた先輩たちがいることを忘れてはいけません。

乙武:そうですね。脈々と受け継がれたものがあるわけです。だからこそ尚更、東京パラリンピックでのメダルを期待したいですが、昨年の世界選手権優勝というのは大きな成果ですね。

池崎:これは自分にとってもチームにとっても自信になりました。チャンピオンになったことで見えた景色、周囲の反応や期待、すべてが今後の道を作ってくれる大切な要素です。

頂点から降りる勇気

乙武:では、2020年にメダルを狙うためには、どのような課題がありますか。

池崎:世界選手権では優勝という結果こそ得られたものの、試合内容自体には決して納得していません。まだまだ修正すべき点はたくさんありますし、その意味では僕らには十分な伸びしろが残っていると思っています。みんなで頂点からの景色を見られたのはすばらしいことですが、またいったんそこから降りて、一つひとつ挑戦しながら再び山を登る覚悟が必要ですね。

乙武:私は人間というのは基本的にメンタルの弱い生き物だと思っているんです。だからこそ、あえて頂点から降りるというのは言葉で言うほど簡単ではなく、非常に勇気の要ることだと思うのですが、池崎さんはどう感じていますか。

池崎:まったく同感です。しかし、上からは足元の景色が見えませんから、一人ひとりがまだ何者でもなかった頃の自分を思い出して、基礎の基礎から学び直す意識が絶対に必要でしょう。これがさらに成長するためのカギになると思います。

乙武:いよいよ来年に迫った東京パラリンピック。池崎さんをはじめとする日本代表の皆さんが、私たちにどのような景色を見せてくれるのか、大いに期待しています。頑張ってください!

乙武 洋匡 作家

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おとたけ ひろただ / Hirotada Ototake

1976年、東京都生まれ。大学在学中に出版した『五体不満足』がベストセラーに。卒業後はスポーツライターとして活躍。杉並区立杉並第四小学校教諭などを経て、2013年に東京都教育委員に就任。著書に『だいじょうぶ3組』『だから、僕は学校へ行く!』『オトことば。』『オトタケ先生の3つの授業』など多数。

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