「車いすラグビー」の想像を絶する激戦の裏側 乙武洋匡が東京大会の雄「池崎大輔」を直撃
池崎:それはもちろんありました。転向する前に試しに体験してみたのですが、「当たっていいですよ」と言われても、どうしても抵抗がありますし。でも、実際にやってみるうちに、意外と大丈夫なものだなと思うようになりました。それどころか、相手をドーンと吹っ飛ばしたときには、スカッとした気持ちよさを感じるようにもなったので、自分の性格にはむしろこっちのほうが合っていたのかもしれません(笑)。
乙武:なるほど(笑)。バスケ時代の経験も生かされていますか?
池崎:そうですね。バスケを15年やってきたチェアスキルは、ラグビーでも十分に役立っています。
乙武:それにしても、生観戦しているといつも、体育館中に響き渡るような轟音にびっくりさせられます。万一、車体と車体がぶつかる際に腕などが巻き込まれでもしたら、粉々になってしまいますよね……?
池崎:間違いないでしょう。測定すると、ときには30Gくらいの衝撃がかかっているそうですよ。自動車事故でも大抵は10Gくらいらしいですから、これは相当な衝撃です。
乙武:それは凄まじい……。その一方で以前、ウィルチェアーラグビーを題材にした『マーダーボール』という映画を見た際には「荒々しい競技」というイメージでいたのですが、実際に試合を観てみると思いのほか知的なスポーツであることにも驚かされました。かなり高い戦略性が求められる競技ですよね。
池崎:それはあると思います。ポジションごとにそれぞれ、頭を使ったプレーが必要な競技です。
乙武:ウィルチェアーラグビーの魅力を世間に周知させるためには、実はコンタクトの激しさやダイナミズムよりも、そうした戦略性の部分をアピールしたほうがいいのではないかという気すらしますよ。陣取りゲームのような頭脳戦にひかれる層もきっといるはずですから。
池崎:たしかに細かな駆け引きの部分も見応えがあるはずです。ただ、どうしても地味で伝わりにくいんですよね。
世界一になったことで見えた、頂点からの風景
乙武:パラアスリートの皆さんは、コストの面でも大きな負担を背負いながらプレーしているケースが少なくありません。ウィルチェアーラグビーの競技用車いすにしても、決して安いものではないですよね?
池崎:ざっと150万円程度ですね。わが家のいちばんの資産は車いすですよ(笑)。
乙武:それほど高価なものを、互いにガンガンぶつけ合うのだからツラいですよね。頻繁に新調しなければならないのでは?
池崎:そうですね。1年、あるいは1年弱といったところでしょうか。やはりアメリカ遠征などへ出るといっそう消耗が激しいです。おまけに競技用の車いすはすべてオーダーメイド。保険が適用されるものでもないので、金銭面は馬鹿になりません。
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