32歳の長友がアジア杯後に抱いた強烈な危機感 日本代表はカタールに敗れ、惜しくも優勝逃す

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もちろんピッチ内での本業にも注力した。長友はウズベキスタン戦を除く6試合にフル出場。日本にとっての今大会ベストゲームとなった1月28日の準決勝・イラン戦では相手攻撃陣のキーマンの1人であるアリレザ・ジャハンバフシュ(イングランド・ブライトン)を完封。仕事らしい仕事をさせなかった。

彼自身、昨年11月にはガラタサライの試合で肺気胸になり、手術を経て復帰してから間もなかったが、守備面での1対1の強さや走力、運動量は依然として健在だった。攻撃参加の部分はタテ関係の原口元気(ドイツ・ハノーファー)とのコンビが確立しきれなかったのと、守りに忙殺される時間帯が多かったため、上がるタイミングが少なく、クロスも精度を欠く場面も散見されたが、年齢による衰えは感じさせなかった。

代表における貢献と自身のパフォーマンスの両面を踏まえても、彼はまだまだチームに必要不可欠な存在だということを示したのではないか。

ただ、森保監督もいつまでも長友に依存しているわけにはいかないのは事実。将来を考えて、今回1試合出場に終わった佐々木翔(J1・サンフレッチェ広島)や、浦和レッズへ移籍した山中亮輔、2018年JリーグルヴァンカップMVPに輝いた20歳の杉岡大暉(J1・湘南ベルマーレ)ら若い世代にチャンスを与えていくことも重要だ。

長友の日本代表としての今後はどうなるか?

若返りが加速する中、2010年の南アフリカワールドカップ世代の生き残り戦士である長友は今後、どのように代表に関わり続けていくのか?

本人は「いつまでも日の丸をつけていたい」と熱望し、闘志を燃やしているだけに、他の左サイドバック候補者たちがこの男を超えるのは容易なことではない。そういう人間が出てくるまで、ベテラン最後の砦には真の代表魂を示し続けてもらわなければならない。

今大会でカタールやUAEら中東勢、ベトナムやタイなど東南アジア勢が躍進したように、簡単にワールドカップのアジア予選を突破できない状況になってきた。長友も「次のワールドカップに行けないこともちょっと考えておかなければ。そのくらいの危機感を持っています」と警鐘を鳴らして続けていた。そんな混とんとした時代になった今こそ、日本代表の重みと勝つことの難しさを熟知する人間が必要だ。

今回のアジアカップで大きな挫折と屈辱を味わった森保ジャパンが強く逞しい集団へと変貌を遂げるためにも、32歳の左サイドバックにはさらなる高みを目指して、走り続けてほしいものである。

(文中敬称略)

元川 悦子 サッカージャーナリスト

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もとかわ えつこ / Etsuko Motokawa

1967年、長野県生まれ。夕刊紙記者などを経て、1994年からフリーのサッカーライターに。Jリーグ、日本代表から海外まで幅広くフォロー。著書に『U-22』(小学館)、『初めてでも楽しめる欧州サッカーの旅』『「いじらない」育て方 親とコーチが語る遠藤保仁』(ともにNHK出版)、『黄金世代』(スキージャーナル)、『僕らがサッカーボーイズだった頃』シリーズ(カンゼン)ほか。

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