「アルツハイマーになった私」が伝えたいこと

「自分を失う」のはとてつもなくつらいけれど

アルツハイマー病と診断されてから、「それ」が少しずつ現実的になっている(イラスト:The New York Times)

アルツハイマー病のように進行の速度が遅い病の場合、診断されても疑う時間がある。診断は間違いで、過去の記憶が書き換えられるのも、言葉が出てこないのも、単に加齢のせいだろう、と。心の奥深くにかすかな希望があるのだ。

しかし、もはや否定できなくなる時が来る。アルツハイマー病自体がそうであるように、一気に訪れるのではなく、その時はじわじわと忍び寄ってくる。

観劇後、何を見たのか覚えていなかった

私にとってのその時は、最近やってきた。ペンシルベニア州ニューホープのダウンタウンにあるバックス郡劇場の前を通り過ぎたときだ。夫のティムと最近そこで演劇を見たことは正確に覚えていた。一緒に観劇した人のことも覚えている。でも私は、何を見たのかがまったく思い出せなかった。

ティムが「Guys and Dolls」だと教えてくれたが、記憶はない。歌も、ストーリーも、場面も、何1つ覚えていなかったのだ。

翌朝、私はベッドに静かに腰掛け、ティムにこう言った。「ついに来たのね」。するとティムは、質問の意味を尋ねることもなく、穏やかに答えた。

「そうだね、来たんだね」

当然ながら、私は泣いた。でも少しだけだ。症状が進んでいることは、自分でも明らかだったからだ。この2年間は治験に参加し、改善を目指して検査を受け、記憶を呼び起こし、注射を受け、勉強もしてきた。でも振り返ってみると、私はずっと疑いを抱いてきた。

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