「アルツハイマーになった私」が伝えたいこと 「自分を失う」のはとてつもなくつらいけれど
その疑いは消えた。かすかな希望も断たれてしまった。私たちは今、これからに向けて真剣に計画を立てなければならない。アルツハイマー病は今後も私からいろいろなものを奪い続け、医学的な奇跡でも起きない限りは、迫りくる「損失」を止めることはできない。記憶の損失、体の可動性の損失、自由の損失だ。
それでも、私は諦めていない。私にはまだ人生があり、戦い、人を愛する時間はまだあると心の底でわかっているからだ。
結婚をして、仕事も続けている
アルツハイマー病と診断されてからも、悪いことばかりではなかった。診断から数カ月後、12年間連れ添ったパートナーと地元の裁判所へ行き、結婚した。私のきょうだいと姪、甥が来てくれ、夫婦としての初めてのキスを写真に収め、幸運を願ってグラスを割るユダヤ伝統の儀式も執り行ってくれた。
アルツハイマー病協会からは、国家諮問委員会メンバーの就任要請も受けた。1年間の就任期間で、すばらしい支援活動や研究活動について多く学び、国内各地でのカンファレンスでスピーチもした。認知症の人や、認知症の治療に取り組む人など、すばらしい人たちにも出会った。
また、幸運にも私は仕事を続けることができている。規模が小さく非営利の今の職場のおかげで、ディレクターという役職を下りて、パートタイムで指導的役割を担うことができている。仕事なしの人生なんて私には想像もできない。
運動も8年続けている。クロスフィットというトレーニングからエクササイズバイクまで、なんらかの運動を毎日行い、血液を循環させている。それほど楽しいと思わない人もいるようだが、私は(それなりに)楽しんでいる。研究でも明らかになっているように、運動はアルツハイマー病の進行を食い止めると信じている。
研究といえば、私はバイオジェン社のアルツハイマー病治療薬候補「aducanumab」の治験に参加している。薬の中身を知らされない16カ月にわたる盲検では、プラシーボ薬と実際の治療薬のどちらかを服用した。現在は実際の薬を服用している。