日本電産、下方修正でも「楽観ムード」のわけ カリスマ経営者・永守会長の警告を読み解く

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17日の会見で永守会長は、米中貿易摩擦の影響で中国を中心に世界的に需要が後退し、2018年11月と12月には自動車や家電など幅広い分野で受注が前年同月比で約30%落ち込んだと説明した。

「11月、12月にガタンガターンと世界的にすべてのセグメントで大きな変化が起きた」、「リーマン(ショック)の時は全体に落ちたが、月単位でこんなドンドンと落ちたのはおそらく46年間経営して初めて」と繰り返し、強烈な危機感を表した。

カリスマ経営者・永守会長の警鐘によって、投資家は貿易戦争の脅威を再認識させられた。当の日本電産はもちろん、ほかの電子部品メーカーや中国関連銘柄を中心に株式市場への影響が懸念された。しかし、翌18日の日経平均株価は前日の1.29%高の2万0666円07銭で取引を終えた。日本電産の株価は一時8%安となったが終値は1%安にとどまった。翌週21日には下方修正発表前の水準を上回っている。

広がる不思議な楽観ムード

日本電産は23日に2018年4~12月期の決算を発表。10~12月期は直前の7~9月期と比較して39.7%の営業減益になった。永守会長は「(米中貿易戦争の影響は今年の)5月くらいにくると思っていたが、意外と早くきた」と、事業環境の不透明さを改めて強調した。

ただ、「停滞は絶好のチャンスで、これまでも市場が回復したときにしっかりと需要を獲得して成長させてきた」と先行きに自信も示した。研究開発や設備投資は従来の計画通りに進めるという。

市場関係者の多くは再び強気に傾いている。「下方修正後の業績予想は保守的なものだと判断している」(冒頭のアナリスト)。永守氏は下方修正した予想について「下げるときはね、一番悪い数字を持っていくのがいい」と発言していたこともあり、25日時点のコンセンサス予想は修正後の会社予想を約2割上回る。

不思議な楽観ムードが漂うのは、世界的な経済の減速が鮮明になれば、必ず対策が取られるはずだという考えもあるようだ。

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