ANAが「未開の地」に相次ぎ就航を決めたワケ JALの猛追を受け、「攻め」の姿勢を鮮明に
中国勢の台頭も気になるところだ。ANAは「世界のリーディングエアライングループ」をビジョンとして掲げている。しかし、アジアを見渡してみると、売上高では中国南方航空・中国国際航空の中国トップ2エアラインの後塵を拝している。中国第3位の中国東方航空もじりじりと差を詰めており、「ANA対JAL」という構図だけでは語れない情勢にある。
ゆえに、林氏は2020年の羽田空港増枠による発着枠配分の結果が出たタイミングで、「(新規路線開設や増便発表といった)加速感がここからぐっと出てくる」と力を込める。次なる就航地として噂されるのがロシアのモスクワとウラジオストクだ。2017年のビザ発給要件の緩和以降、流動の加速が期待されており、今月に入って日本経済新聞が報じた。
またもや立ちはだかるJAL
林氏に質問をぶつけると「就航自体は社内的に決めて準備を進めている。ただ、モスクワ就航は2020年の羽田の発着枠の配分次第で、羽田からにするか成田からにするかを判断したい。ウラジオストクも同様。モスクワと同時に就航するか、少し時期をずらすか。場合によってはロシアよりほかの地域を優先することもあるかもしれない」という。ウラジオストクについては就航による需要を検証中だが、モスクワについてはすでに60~70%の有償座席利用率を期待できるという。
だが、ここでもまたJALが立ちはだかる。モスクワと東京を結ぶ直行便は、アエロフロート・ロシア航空とJALが成田-モスクワ線を運航している。両社は昨年11月に包括提携を結んだ。ロシアで頼れるもう1つのエアライン・S7航空はJALと同じワンワールドに加盟している。オーストラリアと同様に、ロシアもまたJALの牙城なのだ。林氏は「いまのところパートナーにできる相手がいない」とため息をつく。
ANAは2022年の売上高2兆4500億円の中期計画を掲げる(2019年3月期の売上高計画は2兆0400億円)。中計を達成するには、JALとの直接対決が避けられない。JALはバンガロール路線の開設発表と同日に、これまで週4便だった成田―モスクワ間を毎日運航へ増便することも発表している。JALもANAに防戦一方ではなく、ファイティングポーズをとっている。
そんな中で、「確実な路線から展開している」(林氏)というパース・チェンナイ路線がつまずいてしまっては、その後の路線展開に水を差してしまう。 両路線がANAの成長を占う試金石となることは間違いない。
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