ANAが「未開の地」に相次ぎ就航を決めたワケ JALの猛追を受け、「攻め」の姿勢を鮮明に

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チェンナイはインド南部の都市。インドは北部にデリー、中部にムンバイという2大都市とその空港が存在し、現在まで日系エアラインによるインド南部への直行便は存在してこなかった。しかし、日産自動車やいすゞ自動車などがチェンナイ周辺に進出し、製造業が集積しつつある。また、チェンナイはIT産業の拠点として成長著しい都市・バンガロールとの距離も近い。

ANAの海外路線拡大は中期経営計画で掲げられており、パース路線・チェンナイ路線の開設も驚くことではない。ただ、ANAが新規路線の「検討エリア」として挙げているエリアには、欧州で観光需要が高いスペインや、オーストラリアでも日本航空(JAL)も就航し高い有償座席利用率を誇るメルボルンなど、パース・チェンナイ以上に名の知れた未就航地がある。それらよりも先にパースとチェンナイを選んだ決め手は何だったのか。

パース就航は直接対決への布石?

ANAの路線ネットワーク戦略を担当する事業計画チーム・林寛之リーダーによれば、就航の順番は社内の優先順位に則ったものだという。最優先でパース路線開設を決めた理由は、その絶妙な人の流動量(空港間の旅客数)であったという。

現在、シンガポール経由などで日本とパースを往来している旅客数から分析し、「1社が直行便を運航すれば有償座席利用率70%を見込める。だが、2社目が参入すると有償座席利用率が下がり、たちまちうまみがなくなる程度の規模であり、先行してしまえば他社の参入を防ぐことができる」(林氏)。

また、林氏はパース就航が日本航空(JAL)との“直接対決”への布石であることもにじませた。オーストラリアはシドニーやメルボルン、ブリスベンといった代表的な都市が東部に集中している。

しかし、東部の空港を拠点とする豪最大手・カンタス航空はJALと同一の航空連合(アライアンス)・ワンワールドの一員なのだ。国内最大手と提携関係にあるJALと比べるとANAは「オーストラリアでは出遅れていて、存在感も劣後。認知されていない」(林氏)のが現状である。

ANAはこのパース就航をきっかけに、西部からオーストラリア国内での認知度を上げ、現状1日往復1便の羽田―シドニー間のみにとどまる東部へのさらなる路線拡充を視野に入れている。

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