あえて「事実婚」を選んだ34歳男女の強い覚悟 日本の法律婚では「幸せになれない人」がいる

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たとえば、ふたりの住民票の世帯を同一化することで、事実婚の証明とするケースもあれば、夫婦間で契約書などを交わし、法律婚における権利や義務を明文化することもある。

晋太朗さんと萌子さんの場合、「責任ある家庭生活を確立させたい」という意思のもと、「事実婚に関する契約公正証書」を作成。契約書を交わすことで、夫婦別姓を維持したまま法的な結婚に近い関係を結んでいる。

行政書士の水口尚亮さんのサポートを受けながら作成した契約書(写真:OCEANS)

萌子さん「契約書は全部で25カ条。行政書士の水口尚亮さんのサポートを受けながら作成しました。水口さん自身も事実婚をされていて公正証書も作成していたので、水口さんの契約書の雛形をベースに、自分たちに合う形に変更しています」

結婚には責任や義務がともなう

25カ条の内容は多岐にわたる。たとえば、不貞行為を働いた際の罰則や、契約解除(法律婚における離婚と同等)の際の子どもの親権、財産の分配にまつわる取り決めなど、かなり踏み込んだ内容も含まれている。これから人生をともに歩もうとするふたりが交わす書面としては、ややドライな印象も受けるが……。

晋太朗さん「でも、実はそれは法律婚でも同じことなんです。法律婚における民放の条文には、たとえば配偶者に不貞な行為があった場合、離婚の訴えを提起することができると定められています。つまり、法律にのっとって結婚している夫婦も、目に見える形の契約書こそ交わしていなくても、婚姻届を出すことで発生する多くの権利や義務を負っているんです。ただ、それを意識されている方は少ないのではないでしょうか」

確かに、結婚にあたり法律婚の民法の条文をきちんと把握してから臨むカップルは、そう多くないだろう。その点、晋太朗さんと萌子さんは、契約書を交わすことで結婚に伴う責任や違反を犯した際のリスクをしっかりと認識し、そのうえで夫婦生活をスタートさせている。そこには法律婚以上に堅実で、強い覚悟が感じられる。

晋太朗さん「結婚って、夫婦や家族関係が円満なうちは何も問題はないんです。それがたとえば離婚するとなった途端、親権や財産をはじめさまざまな問題が一気に噴出する。どちらかが死んだ際には遺産の行方なども発生します。それらの問題を先送りせず、あらかじめ想定しておくことは、事実婚、法律婚にかかわらず大事なことだと思います」

萌子さん「もちろん、感情的なことを考えると、そこまでやらなくてもいいんじゃないか、せっかくの幸せな気持ちに水を差してしまうんじゃないか、という意見もあると思うんです。ただ、いつ何があるかわからないし、もしかしたら災害や事故でどちらかが急に亡くなることだってあるかもしれません。ですから、私たちは契約書と別に遺言書もお互いに用意して、もしものときに備えています」

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