あえて「事実婚」を選んだ34歳男女の強い覚悟

日本の法律婚では「幸せになれない人」がいる

晋太朗さん「遺言書を書いておくことで、自分に何かあったときでもパートナーや子どもを安心させられます。それに、遺言書を書くことで自身のライフプランを見つめ直し、これから先の人生について真剣に考えるきっかけにもなりました。20代、30代でこれから結婚しようという人って、自分が50年後に死ぬことなんてなかなか考えられないと思うんです。それを今のうちから考え、パートナーと共有しておくのは、夫婦生活や自身の人生を考えるうえでもいい経験になるはずです」

いつかは法律婚を選ぶかもしれない

事実婚を選ぶにあたり、さまざまなシミュレーションを行ったふたり。特に、法律婚をしていないことで直面しそうな問題については、徹底的に調べたという。

晋太朗さん「たとえば、事実婚だと住宅ローンを夫婦の共有名義にできない、また、生命保険の保険金の受取人にパートナーを指定できない、といったデメリットがあると言われています。もちろん、そういった傾向はあると思いますが、最近は事実婚の夫婦に対しても柔軟に対応してくれる銀行や保険会社も増えてきています。世の中の流れや盛り上がりに応じて社会は変わっていきますので、そこはあまり心配していません。事実婚夫婦やLGBTのパートナー同士にも対応した住宅ローンや保険商品が出てくるのも、おそらく時間の問題でしょう」

それでも懸念点はある。萌子さんがとくに不安視するのは、子どもの気持ちだ。

萌子さん「今、子どもは私の戸籍に入っています。そのうえで、夫が子どもを認知することで親子関係を証明していますが、夫と子どもは苗字が異なります。子どもがもう少し成長すれば、『どうしてお父さんと苗字が違うの?』と、疑問を持つと思うんです。そのときに傷つけることなく理解してもらうにはどうすればいいのか? その答えは、まだ用意できていません」

そのほかにも、この先さまざまな壁にぶつかる可能性はある。それでも頑なに事実婚を貫くのだろうか?

萌子さん「私たちも法律婚の可能性を完全に排除しているわけではありません。やはり、ぶつかってみないとわからない困難はあると思いますし、法律婚をしたくなったらすればいいと考えています。ただ、現状の私たちにはこの形が合っているのかなと」

もちろん、ふたりにとって最も望ましいのは法律自体が変わり、夫婦別姓を含む多様な結婚のあり方が認められること。晋太朗さんは、こう期待を寄せる。

晋太朗さん「今まさに夫婦別姓の裁判が行われていますが、それが認められるだけで、これまで法律婚をためらっていた多くの人たちが一気に結婚へと流れるかもしれません。日本はまだまだジェンダーギャップが強い国だと思います。法律は本来、すべての人を保護するための仕組みであり、そうあるために時代とともに変化していくべきなんです。

私たち夫婦のようなケースだけでなく、ほかにもたとえば非婚出産など、さまざまな夫婦・家族の形があります。これだけ多様な生き方や価値観が存在する時代、社会的にコンセンサスを作りながら、時代にマッチした新しい法律婚があってしかるべきなのではないか。そう考えています」

法律は時代とともに変化していくべきなんです、と語るふたり(写真:OCEANS)

(取材・文:榎並紀行)

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