あえて「事実婚」を選んだ34歳男女の強い覚悟 日本の法律婚では「幸せになれない人」がいる
晋太朗さん「自分たちで調べるだけでなく、専門家の方のアドバイスも仰ぎました。お話を伺った行政書士の水口尚亮さんは自身も事実婚で子どもを育てている、いわば実践者です。
事実婚と一口に言っても、そのやり方はさまざまです。住民票の世帯を同一にするだけの夫婦もいれば、さまざまな契約書を交わして法律婚における夫婦と同等の権利や義務を課すケースもある。水口さんの場合は、民法の規定を踏まえた契約書を作成していて、それは責任ある家庭生活を送りたいと考えていた私たちにとって、とても参考になりましたね」
事実婚でも契約書や遺言書などを作成することで、法律婚に近い権利と義務を持った夫婦関係を作ることはできる。また、住宅ローンや生命保険の引受人に関しても、最近では法律婚・事実婚にかかわらず柔軟に対応してくれるケースが増えていることもわかった。
さらに、子どもや親族を含めた家族への影響も踏まえた結果、「自分たちにとっては、特段のデメリットはない」と判断し、ふたりは最終的に事実婚を決断する。法律による後ろ盾を得ることより、夫婦別姓をはじめとする“フェアな関係”を維持することを選んだ。
また、当初は事実婚に必ずしも積極的ではなかった萌子さんの考え方も、現行の法律婚や事実婚への理解が深まるにつれ変わっていく。
萌子さん「事実婚のプロセスを通じ、結婚制度の成り立ちなどについても学び、改めて深く考えるようになりました。また、同時期にあるスポーツ選手と仕事でお話をする機会があったのですが、彼は自分の名前に誇りを持ち、くじけそうなときは己の名前を復唱することで気持ちを鼓舞しているとおっしゃっていたんです。自分の名前は、自分の存在意義であると。それを聞いたとき、自分が持って生まれた名前って、実はすごく大事なものなんじゃないかと思うようになったんです。
そう考えると、結婚したからといって姓を変えなければならないのはすごく変だし、それが知らず知らず当たり前になっているのも怖いことだなって」
親はあっさり許してくれた
最近では新しい夫婦の形として認識されつつある事実婚。しかし、そうはいっても未だ偏見や誤解は残り、法律婚に比べ軽いもの、無責任な関係といったイメージもあるだろう。実際、萌子さんも高齢の祖父母には、ちゃんとした説明はできていないそうだ。
晋太朗さん「そこは、世代間の結婚観の認識の違い、捉え方の違いがあるので難しいところです。なかなか埋められないと思いますので、どう説明したりやり取りしたりしていくか日々悩んでいるところです」
ただ、互いの両親へは、さすがに説明しないわけにはいかない。特に気がかりだったのは、「絶対に反対すると思っていた」という萌子さんの父親の反応だ。しかし、意外にもあっさり受け入れてくれたという。