3000人を看取ってきた医師「断っていい延命治療もある」、最小限の医療で実現する"自然な看取り"。「決断」する日のために知っておきたいこと

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在宅での看取り
近年は、とにかく延命治療、という考え方は薄れ、患者さんや家族の意思や希望が尊重されるようになっています。そのときのために普段から、いざというときはどうしたいか、話しておくことも大事です(写真:mits / PIXTA)
人生の最期をどう迎えるかは、誰にとっても避けられない出来事であるのに、普段の生活では考える機会がほとんどありません。けれど全員が迎える死について、前もって考えておくこと、知っておいたほうがいいことはたくさんあります。
愛媛県松山市で、四国で初めての在宅医療専門の「たんぽぽクリニック」を開業した医師の永井康徳さんは、これまで3000人以上の人を看取ってきました。大切にしていることは、患者さんが「楽なように やりたいように 後悔しないように」。
いつか迎える最期に「みんなが幸せだった」と思えることを願う永井さんが、自身の看取り経験から感じた、いま伝えたいこととは(本記事は、永井さんの著書『後悔しないお別れのために33の大切なこと』より一部を抜粋、再編集したものです)。

余命1週間からの復活

91歳の男性の患者さんは、たんぽぽクリニックに転院する前の2カ月間は絶食で過ごしていました。余命1週間程度と宣告されて、看取りのためにたんぽぽのおうちに入院することになったのです。

私は看取り前の医療は最低限でいいと考えているので、家族(妹さん)に点滴が負担になっていること、楽に過ごすためには点滴をやめて、できるだけ口から食べて、自然にまかせたほうがいいことをお伝えしました。

妹さんもこれ以上しんどい思いをさせたくないと希望されたので、点滴を中止しました。

点滴をやめた翌日、目を覚ました患者さんは「ソーダが飲みたい」と大きな声でおっしゃいます。さっそく、とろみをつけたソーダ水を用意したところ、ゴクンと飲み干して「うまい!」とご満悦です。2カ月ぶりに口にしたソーダはさぞかしおいしかったことでしょう。

すぐに食べる訓練がスタートしました。とろみのあるやわらかいものから、食材をすりつぶしてかためたムース食へ、徐々に食べ物の形態を変えていきます。

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