「球数制限」のつらいところは「目に見えて成果が上がるものではない」という点にある。球数制限のあるチームとないチームが対戦すれば、多くの場合、球数制限のあるチームが負けるのだ。エース級を何人もそろえるチームは少ないから、エースが続投できないチームのほうが弱くなるのだ。
中長期的には「球数制限」の導入は野球肘などの故障が減り、より長く良好な状態で野球を続ける選手が増えて野球界に貢献することになるが、目先の勝利を追ううえでは、マイナスに働くことが多い。
球数制限を導入した春季新潟県大会を勝ち抜いた新潟県代表が、制限がなくなった北信越大会でどんな試合をするのかにも注目だ。
しかし、すでに多くの野球指導者が「野球の未来」を考えるうえでは「球数制限」が必要だと思うようになっている。「球数制限」は「勝利至上主義」の対極にあると考えることもできるのだ。
まだ改革の入り口に立ったにすぎない
堺ビッグボーイズの阪長友仁コーチは、大阪府出身だが新潟明訓高校に進み、甲子園で本塁打を打った。その後立教大学に進み、硬式野球部キャプテンもつとめた。現在はドミニカ共和国など先進的な少年野球を推進している国に範をとり、「勝利至上主義」を否定し、子供の未来のための野球改革を世に訴えている。阪長氏に今回の新潟県の改革について話を聞いた。
「私もご縁がある新潟県から新たな一歩が踏み出されたことをうれしく思います。関係者の勇気ある英断に敬意を表します。
投球数のルールだけでなく、子供たちの未来をいちばんに考えたルール作りは大人の役目です。今年は高校生投手の投球数・登板間隔がクローズアップされることも多かったですが、われわれが指導にあたる中学硬式野球チーム『堺ビッグボーイズ』では、すでに何年も前から投球数の制限をしています。今、中学生は最も多くても80球前後になっています。
また、5年前から主催する中学硬式野球のリーグ戦(勝利至上主義になりがちなトーナメント制を廃止)では、他チームも含めて投球数・変化球・登板間隔をルールに定めた大会を実施しています。
このノウハウを大阪、新潟、長野、岐阜などでも活用してくださる高校も出はじめています。
こうした私たちの取り組みが、今回の決定に少しでも寄与しているとすればうれしく思います」
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