「球数制限」導入する新潟県高野連の思惑は? 導入に当たり懸念材料、日本高野連の動向も

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「野球離れ」が年々深刻になる中で、野球の改革が進まないのは、プロ、学生、社会人、少年野球などの各団体がそれぞれ小さな山を作って、互いに連携することなく唯我独尊的に存在していることが大きい。1つの団体が何か事を起こしても、連携することが少ないので、運動が広まっていかないのだ。最近は、そうした団体の垣根を越えた活動が増えてきてはいるが、ここまで思い切ったことができるのも新潟県ならではだ。

高校野球に球数制限が導入されれば、それを目標に野球をしている中学以下の少年野球にも間違いなく波及する。投球過多で野球肘などの健康被害にさいなまれて野球を断念する子供は数多いが、野球を始めた頃から球数制限をすることによって、こうした犠牲者は減少するだろう。

「球数制限」導入の懸念材料

ただ、導入するに当たっては、いくつかの懸念材料がある。

1つは「球数管理」の問題だ。少年野球のポニーリーグは、独自に球数制限を導入しようとしているが、各試合で球数をカウントする人手を確保することができず、導入が遅れている。

プロ野球では、専属の公式記録員がいて、逐一球数もカウントしているが、高校野球では主催する新聞社の記者が交代で記録をつけるのが一般的だ。球数制限をする場合、スコアボードに表示するか、イニングごとに場内放送で球数をアナウンスするか、いずれかをしなければならないが、春季新潟県大会ではどのような運用になるのか。主催者の新潟日報が協力するのか、高野連や各高校が担当するのか。運用面での課題は残るだろう。

もう1つは、「試合での球数制限」だけでは不十分だということだ。高校野球では伝統的に「投げ込みで制球力をつける」という指導法が長く行われていた。今では肩や肘への影響を考えてブルペンでの球数を制限する指導者が増えているが、それでも「投げ込みは重要」という指導者も存在する。試合だけでなく、練習も含めた包括的な「球数制限」へと話をもっていかない限り、実効性はないだろう。

また今回の発表では「登板間隔」の話がないが、100球に球数を制限しても、トーナメント戦の終盤で連投を強いられるようなら意義は少なくなる。このあたりも気になるところだ。

さらに、「球数制限」を導入しても、打者がファウルなどで粘って相手投手の球数をかさませる「待球作戦」をとれば、投手交代が早まり、試合が成立しなくなる可能性がある。日本のアマチュアチームは「球数制限」のある国際試合で実際に「待球作戦」をして海外のチームからひんしゅくを買っている。

海外の指導者から「お前たちのチームは強いが、俺たちは絶対にお前たちのような野球はしない」と言われることもあるという。「待球作戦」は一種のモラルハザードであり、「勝利至上主義」的な作戦だと言える。このあたりの議論は十分に行うべきだろう。

次ページすぐに成果は上がらない、長い目で見て
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