レクサス「UX」の姿形は一体どこが新鮮なのか LCやESにかけての流れとは一線を画す

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確かにUXは低い。ボディサイズは全長4495mm、全幅1840mm、全高1540mmで、多くの機械式駐車場に収まる高さにしてある。UXが出るまでレクサス最小のクロスオーバーSUVだったNXの全高は1645mmだったから、幅はほぼ同じなのに対し長さと高さが切り詰めてある。

このサイズ感、2018年UXに先駆けて日本で発売したBMW「X2」に近い。BMWにはすでに同じクラスのSUVとして「X1」があるが、X2のボディサイズは4375×1825×1535mmで、幅はほぼ同じであるものの長さは80mm、高さは65mm、X1を下回る。

X2のエクステリアデザインも、他のBMWと比べるとかなり演出が多い。通常は車体前後にしかないBMWのエンブレムをリアクォーターピラーにも装着したうえで、MスポーツXという仕様では前後バンパーの一部、フェンダーアーチモール、サイドシルのモールをグレーとしている。

エントリーレベルのSUVに、同じブランドのほかのSUVよりも目立つディテールを与え、フレッシュなイメージを持たせるという手法は、2018-2019日本カー・オブ・ザ・イヤーを受賞したボルボ「XC40」にも当てはまる。

全高こそUXやX2ほど低くはないものの、デザインの基本は上級SUVの「XC90」や「XC60」から受け継ぎながら、2トーンカラーや台形を強調したキャラクターライン、プレーンなリアパネルなど、兄貴分にはない斬新なディテールを取り入れている。

乗るたびに新鮮に感じるインテリア

レクサスUXに話を戻そう。インテリアはまず、前席が乗り降りに最適な高さであることに好感を抱いた。車内に収まると、SUVとしては全高が低めなので窓の天地の丈が短いものの、インパネの高さが抑えられており、上面の凹凸をボンネットと合わせていることもあって、車両感覚はつかみやすかった。

刺し子をモチーフにしたステッチを用いたシート(筆者撮影)

インパネの一部には和紙の風合いを再現し、シートには刺し子をモチーフにしたステッチを用いるなど、和のエッセンスを取り入れていることもUXの特徴だ。いずれもこれ見よがしではなく、さり気なく取り入れてあって好印象だった。

インターフェイスはかつてのレクサスより整理されていて、ピアノタイプのエアコンスイッチは操作しやすく、センターアームレストの先に仕込んだオーディオのコントローラーはパソコンのマウスのように直感的な操作が可能だった。

フロアの高さが気になる荷室(筆者撮影)

後席は身長170cmの筆者が座った場合、ひざの前には約15cmの空間が残り、頭上にも余裕があった。ただし荷室は床が高めで、容量は220Lにとどまる。床下には収納スペースがあるものの、X2の半分以下という数字は評価が分かれるだろう。

走りの印象にも触れておくと、2LガソリンのUX200と2LハイブリッドのUX250hがあるパワートレインは、後者はかなり静かかつ滑らかなのに対し、前者は自然吸気でトランスミッションがCVTなので、回転を上げて走ることが多く、その際の音が気になった。NXが積むターボエンジンのほうが回転を抑えたまま走れるので、上質感では有利になるだろう。

サスペンションはスポーティグレードの「Fスポーツ」だけでなく、ラグジュアリーグレードの「バージョンL」も、低速ではタイヤの硬さが伝わってくるが、速度を上げると気にならなくなる。その分ハンドリングは軽快で、ステアリングの反応は自然。シートは座り心地に長けたバージョンL、サポート性に優れたFスポーツと性格がはっきり分かれていた。

新規ユーザーをブランドに取り込む。そのために目立つ造形を取り入れる。このあたりの手法はX2やXC40とも通じるものだが、UXのデザインはより大胆にほかのレクサスとの差別化を図っていた。特にインテリアはさまざまなトライをしていて、乗るたびに新鮮だった。

X2やXC40を見ていると、ドイツ車が中心になって築いてきた、上から下まで同じデザインでそろえるというブランディングに飽きがきているのではないかと感じる。であるならUXの攻めのデザインは最新トレンドを理解していると思うし、次のレクサスがどんな方向性を打ち出してくるか、楽しみでもある。

森口 将之 モビリティジャーナリスト

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もりぐち まさゆき / Masayuki Moriguchi

1962年生まれ。モビリティジャーナリスト。移動や都市という視点から自動車や公共交通を取材。日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員。著書に『富山から拡がる交通革命』(交通新聞社新書)。

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