株式市場では日銀が昨年は6兆円超と、ほぼ外国人の売り越しに匹敵するくらい株式を買っているのだが、売買の際の価格への関与が外国人投資家ほど積極的ではないために、短期的な株価の動きにあっては外国人投資家の売買動向が決定的な状態が続いている。
もちろん、日銀の株式買いのもう少し長期的な株価水準への影響や、他の売買主体に与えている影響については、探ってみたい所ではある。前者には「自然な株価形成を分かりにくくしている」、後者には「日銀は個人投資家のより安値での買い機会を奪っているだけだ」、という批判の声があることを付け加えておこう。
サイクル的には「少し早いけれども自然な下げ相場」
さて、株価(を典型として資産価格全般)には、「金融の緩和・引き締め」及び「景気の拡大・後退」に呼応して、長期的なトレンド水準の上下への乖離を大きく繰り返すような「サイクル」がある。
もちろん、後から見て正しいトレンド水準が何処で、今の株価がサイクルのどこに位置しているのか、市場の参加者には正確に分からないのだが、サイクルが理解の手助けにはなる。最近の書籍だとハワード・マークス「市場サイクルを極める」(貫井佳子訳、日本経済新聞出版社)が丁寧にサイクルの説明をしており、投資家の参考になるが、この本はいささか丁寧すぎて、100ページで説明できることを400ページ以上掛けて説明しているような印象があるので、手っ取り早く「山崎式経済時計」(これまでにも何度か見て頂いている)をご覧頂こう。
この図で行くと、アメリカの株式市場は、どうやら2時近辺にあるように思われる。金融の引き締め・金利の上昇で、株価が崩れひいては景気にもブレーキが掛かることは、サイクルとしては典型的な動きであり殆ど避けようがない現象だが、長期金利が3%のレベルで下落相場入りしたのは「少々早かった」。
ドナルド・トランプ大統領就任以来、絶好調のアメリカ景気であったが、対中国の赤字に難癖を付けた政治ショーが米中間の情報産業の競争問題に変質してきた米中貿易摩擦や、トランプ氏自身が指名した「素人っぽい」FRB(米連邦準備制度理事会)議長が普通の中銀マンらしい職責を果たして今年も1、2度利上げしそうなことを思うと、下落相場はもう少し続いてもおかしくない。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら