「住宅税制」はなぜこうも複雑・難解なのか 増税に向け抜本的見直しを求める動きもある

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住宅業界の本音は、欧米先進国で行われている住宅取得に係る消費税の非課税、あるいは軽減税率の適用の恒久的な形での実現にある。

軽減税率・非課税のいずれにしても、住宅に適用されれば今よりシンプルでわかりやすい税体系となり、消費者は安心して住宅取得ができ、結果的に内需の下支えができるという考えだ。軽減税率・非課税は、住宅業界関係者にとって「長年の悲願」だ。

それには切実な理由がある。「消費税が10%を超える場合、業界・企業として対応が難しい」(阿部俊則・住団連会長=積水ハウス会長)からだ。ご存じのように、住宅は数千万円単位の買い物。消費税がさらに増額されると、特に住宅のメイン需要層である20~40歳代の消費者が購入しづらくなるとの懸念からだ。

住宅に消費税一括課税は適さない

また、取得時に消費税を一括で課税されるのは30年以上の長期耐久消費財である住宅には適さないという指摘もある。前述したように、住宅は取得時から売却時まで課税されるものでもある。だから、「住宅税制の改革を」というわけだ。

ところで、このような話題について、「住宅を購入する計画がないから関心がない」などという方もいるだろう。しかし、住宅取得の機会、あるいは検討を始める契機というものは、ある日突然生まれるものである。

結婚や出産はもとより、親との同居や介護の必要性から、新築や建て替え、リフォーム、住み替えなど、住まいについて考えなくてはならない場面が唐突に訪れる。多くの場合、そのときに急かされるように検討をし、結果的に満足度の低い住宅を手にしてしまうことが往々にしてある。

住宅税制と負担軽減策が難しいのは、住宅を取得する一部の人たち、あるいはその機会がある恵まれた人のためのものと考えられがちなこと。「ぜいたくなものには課税すべき」という風潮さえないわけではない。あるいは「業界エゴ」との批判もあるかもしれない。

このような理由から、普段は多くの国民にとって疎遠になりがちな住宅と税の話題。しかし、住宅、中でも質の高い住宅が増えることは、災害への備えなどの面で貢献し、国土の強靱化につながる。

個人財である一方、社会財としての側面もあるのが住宅なのだ。消費税が10%に高まるという節目である2019年は、住宅税制のあり方について改めて議論するには少なくともいいタイミングではないか。

田中 直輝 住生活ジャーナリスト

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たなか なおき / Naoki Tanaka

早稲田大学教育学部を卒業後、海外17カ国を一人旅。その後、約10年間にわたって住宅業界専門紙・住宅産業新聞社で主に大手ハウスメーカーを担当し、取材活動を行う。現在は、「住生活ジャーナリスト」として戸建てをはじめ、不動産業界も含め広く住宅の世界を探求。

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