「エモい」で判断するのがあまりに危険なワケ

共感できない相手こそ「対話」することが必要

「エモい」や「共感」という言葉をよく聞くようになりました(写真:pearlinheart/PIXTA)

ここ数年、「共感」という単語をよく見かけるようになった気がします。学術的には英語のempathy(エンパシー)の訳語として、「ほかの人と同じ感情を共有すること」と定義されているようです。

しかし、SNSなどでの使われ方を見ると、何らかの主張や活動に対して、気分的に同意する、賛同する、要は「好き」といった意味での使われ方が多いように見受けられます。SNSの「いいね!」とほぼ同じようなものだと考えられます。

さらに最近では、「エモい」という言葉もよく見かけます。「エモい」は、三省堂の「今年の新語2016」で第2位、「マイナビティーンズ」というサイトの「2018年10代女子が選ぶ流行ったコトバ」でも堂々の第1位になっています。「エモい」の語源は英語のemotionalで、感情に訴えかけてくる、あるいは「心に刺さる」といった意味合いがあるようです。

こうしてみると、「共感」も「エモい」も、どちらも感情的な判断に関する表現で、社会全体が感情をより重視するようになってきたのだと推察できます。

経済学的にも人間は「エモい」生き物

実は、学術の世界でも同じようなことが起きています。ダニエル・カーネマンの社会心理学の研究や、ダン・アリエリーをはじめとする行動経済学の研究により、人間の判断が客観的な費用や便益に基づいて合理的に行われているわけではないことが次々と明らかにされています。

「金銭などの動機づけを与えれば人間は合理的に行動するはず」だ、という前提のもとで、経済学も、経営学も、行政学も発展してきたはずなのに、そもそもの前提が間違っていたことが明らかになってしまったのです。

人間は「合理的」な判断はせず、むしろ「共感」や「エモい」に突き動かされて生きているのではないか、という認識が社会に広まりつつあるからこそ、そのような単語が流行するのかもしれません。しかもその認識は、単なる時代の流行ではなく、実証研究によって明らかにされた事実でもあるのです。

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