AIで日本の雇用が壊れる悪魔のシナリオとは? 30代半ばから40代の人が一番危ない?

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大久保幸夫(おおくぼ ゆきお)/リクルートワークス研究所所長。株式会社リクルートホールディングス専門役員。他に一般社団法人産業ソーシャルワーカー協会理事、一般社団法人人材サービス産業協議会理事、一般社団法人JAPAN INNOVATION NETWORK理事も務める(撮影:風間仁一郎)

大久保幸夫:ありがとうございます。私は1980年代にこの世界に入ってから一貫して雇用の問題を見てきていますが、やはり大きく変わる瞬間があるんですね。例えば、プラザ合意やバブル崩壊、インターネットの本格的登場は日本の雇用を大きく変えた出来事でした。

インターネットが出始めた1996年から1997年にかけての時期、私は就職情報サイトのリクナビの立ち上げをやりましたが、当時、インターネットプロバイダーを通じて、インターネットに接続している学生なんて、まだあまりいませんでした。そうしたなか、それまでの紙媒体に変えて、インターネットで行う就活ビジネスを始め、それを成功させました。当時は、インターネットを使って黒字化している商品はほとんどありませんでした。

インターネットの話は一例に過ぎませんが、現在のAIというのは、それに続く大きなものになる可能性があるでしょう。そのスピードや規模がメディア等で取り上げられているとおりになるかはわかりませんが、将来、多くの変化をもたらすことは間違いないと思います。

AI活用で予想される「2つのシナリオ」とは?

中原:日本はAIに関する投資がかなり遅れていて、古いつぎはぎだらけのシステムを使っている企業が多いとよく聞きます。今は最新のAIを導入する前段階で、比較的安価で導入できるRPAの活用が2017年に大企業の間で急速に広がっているものの、いずれにしても日本の企業には欧米に比べて、AIやRPAで生産性を引き上げる伸びしろがあるはずです。

そのような状況下で、人手不足の解消を目指していこうという流れも相まって、クラウドを利用したさらなる安価なRPAの導入は当然として、ディープラーニング型のAIを積極的に活用していく流れが不可避であるように感じています。AIを導入できる企業とそうでない企業の生産性に開きが生じ、とりわけ中小企業では二極化が鮮明になっていくのではないかと予想しています。

大久保:ご指摘のとおりで、人手不足がAI活用の追い風になっているのは確かです。ただ、そのこととAIの普及が雇用を奪うというのは別の話だと思っています。AIの活用が進んでいった場合、何が起こるかというと、2つのパターンに分かれるでしょう。

1つは、例えば人間の仕事の半分以上をAIが行う状態になって、人間が行う仕事の領域が小さくなっていくパターンです。コールセンターの業務が典型ですが、AIが普及すれば、理屈の上では少ない人手で済むということになります。しかしながら、実際にそうはなっていません。コールセンターの業務では、AIが導入されたにもかかわらず、そこで働く人の数は減っていません。なぜかと言うと、コールセンターは従来業務に加え新たなサービスを拡大しているからです。つまり、AIを活用することで、事業を成長させているのです。

このような例がシナリオAですが、もう1つのシナリオBも考えられます。それは銀行の窓口業務に代表されるものですが、銀行そのもののビジネスモデルがすでに制度疲労を起こして、別の競争時代に入っている場合です。このような場合には、AIを入れれば雇用が奪われていくことは避けられません。

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