結果を出す人は「左脳と右脳」を交互に使う 思考の「サンドイッチ構造とキャッチボール」

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企画部門のスタッフが、中期計画を策定するプロセスを想像してみてほしい。よくある話は現場を知らない企画部門がつくった計画が、いざ実行段階で現場にとっては「絵に描いた餅」だったり、過重な負担のために進まないといったケースである。

こうした場合は、最初につくった中期計画をいったん現場サイドに下ろして、なにか引っかかることはないのかと確認したりする作業が必要となる。

現場の声は得てして、定性的で要領を得なかったり、理屈になっていなかったりするが、こうした反応を右脳で感じ取ることが大切になる。さらに、計画が上からの押し付けととられないように現場のオーナーシップを高める、あるいは、彼らがワクワクできるプランを織り込む必要がある。これらも極めて右脳的なプロセスである。左脳で考えたロジカルな案を右脳でチェックしたり、肉づけしたりすることになる。

経営トップや組織のリーダーが何か成し遂げようとする場合はどうだろうか。リーダーがロジックでつくった計画をそのままロジカルに説明したところで、組織は前に進まない。なぜ必要なのか、あるいはなぜこれを自分はやりたいのか、さらにはこれをやり遂げるとどんなよいことがあるのかなどをメンバーの心に直接届くように語ったり、仕組みをつくったりしないとダメだ。逆に言えば、先に心(感情)を語って、それをうまく理屈づけしていく説明のプロセスが実行を効果的に進める手法となる。

「右脳で左脳をサンドイッチにする」思考法

私の持論は、人間がビジネスで使うものの考え方は、右脳と左脳がキャッチボールをしている状態、すなわち思考が右脳と左脳の間を行き来しながら仕事が進むというものだ。人間が仕事で何かアウトプットするためには、まずインプット、次に検討・分析、そしてアウトプットに至る。それぞれのステージでは、右脳、左脳、右脳が主な役割を果たす。

(図:筆者作成)
①インプットステージ

まず情報のインプットが必要である。そのプロセスは通常、五感をフルに活用する。ものを観察したり、異変、あるいは面白いことを感じ取り、その結果が課題の仮説となったりする。場合によっては何かひらめいて、解決策の仮説となったりもする。もちろん、データを読み取るには左脳も大事であるが、データから何を読み取れるかはセンスの問題でもあり、右脳の世界とも言える。

②検討・分析ステージ

インプットした情報に基づいて、真の課題を特定し、解決策を考える。課題が複雑な場合はそれを構造化したり、仮説はそれが正しいかどうかを検証したりするプロセスが必要となる。これらは左脳を目いっぱい使ってやるプロセスである。難しく言えば、情報処理のプロセスである。

③アウトプットステージ

結論を導き出し、その結論を人に「腹落ち」してもらい、実行に導くプロセスである。「腹落ち」とはコンサルティング業界の言葉で、「理屈はもちろん、感覚で大いに納得している状態」を指す。結論はロジカルに左脳で決めることもできるが、その後にチームや組織、あるいは顧客を動かそうと思えば、右脳を主に働かせて決めたほうがよい。特に、先行き不透明な中でエイヤッと決めるのも右脳である。

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