ルネサス鶴岡工場、「独立構想」の全貌 ソニーの出資をテコに工場の存続を目指す

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鶴岡工場の生産能力は月産2万数千枚(300ミリウエハ換算)で、このうち任天堂の家庭用ゲーム機向け混載DRAMが月産8000~9000枚を占める。オラクル(旧サン・マイクロシステムズ)向けも重要な顧客だ。鶴岡工場を維持し続けるためには、最低でも月産1.5万枚の生産能力を確保する必要があるが、関係者は任天堂の家庭用ゲーム機の販売低迷を受け「任天堂とオラクル向けは合計で月産5000枚まで落としても大丈夫」と試算する一方、残りをソニーのCMOSイメージセンサーと、その他既存顧客で埋めることを考えている。

中期的にはミクストシグナル半導体において新規顧客の獲得を目指す。オリンパス、TDKなどに営業して、医療や監視カメラ、産業機器用モジュールといった新規顧客を取り込む計画だ。その結果、事業バランスを円グラフのようにすることを目指すという。

カギ握る那珂工場への装置移設

実現のカギを握るのが、鶴岡工場内にある製造装置600台の移設計画。鶴岡工場の閉鎖を決めているルネサス経営陣は、車載用マイコンの生産ラインを那珂工場に移設し事業を継続する方針。それについては鶴岡工場の存続を目指すグループも納得済みだが、問題視しているのは、それ以外の製造装置についても移設の対象になっていることだ。「ルネサスは複数の生産ラインから装置を自由にピックアップして、那珂工場に移設しようとしている。そうなると生産継続が困難になる」(関係者)。任天堂向け混載DRAM向けの製造装置も例外ではなく、移設後に生産ラインが歯抜け状態になる可能性があるという。

そもそも、独立ファウンドリー構想には大きな難点もある。ソニーは鶴岡工場買収によって、最低でも月産1万枚のCMOSイメージセンサーの生産能力を確保することを想定しているようだ(現在ソニーの生産能力は月産6万枚)。しかし、ルネサスが那珂工場への装置移設を大胆に進めてしまうと、月産6000枚程度しか確保できないおそれがあるという。この程度の規模ならば長崎にある自社工場を増強すれば間に合ってしまうため、買収メリットを見出しにくくなる。

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