鎌倉路地奥のイタリアンが評判になった理由 兄はピザ職人、弟はチーズ職人

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山形は盆地で寒暖の差が激しく、「ここでピザが焼ければ、日本のどこへ行っても焼くことができる」という環境での2年間の修行はいい経験になった。しかし、「ピザはイタリアのソウルフード。イタリアの人たちはどんな気持ちでピザを焼いているのだろう」という深いところが知りたい気持ちが抑えられず、ナポリへ旅立った。

ナポリの人たちは皆、温かかったが、修行中は給料が支払われるわけではなく、帰国後の就職先を探しながらの、時間もお金もない中での短期間の修行だった。

マルゲリータ アル フィレット。税込1296円(筆者撮影)

「ナポリの人たちは基本的にアバウトですが、決めるところは決めてきます。たとえば、生地に入れる酵母の量。僕は必ず計量していましたが、向こうの人に今日はどれくらい入れればいい?と尋ねると、爪を出してこれくらいでいいというのです。それで実際に焼いてみると、本当においしいピザが焼けます。一見、ラフにやっているように見えますが、感覚の中にきちんとした基準ができているのでしょう」(健太郎さん)と、技術的な部分だけでなく、気持ちや感覚の面で得たものが大きかったという。

弟はイタリアの田舎町へ

一方の大志郎さんは、プーリア州のチェリエメッサーピカという街に渡る。なぜ、もっとメジャーな街ではなく、田舎町を修行の場に選んだのか。

「イタリア各地を旅していた時期があったのですが、プーリアに行ったときにいちばん心が落ち着き、ここだなと思ったんです。しかも、トスカーナ料理、シチリア料理というようにイタリアには州ごとに異なる料理があるほど食文化が豊かですが、素朴な田舎料理のプーリア料理が、とてもおいしく感じたのです」(大志郎さん)

すっかりプーリア料理を気に入った大志郎さんは、横浜のある店でプーリア料理を始めるが、現地で修業をしたわけではなく、また、プーリア料理に関する書籍は非常に限られていた。結局、行き詰まってしまい、どうしてもプーリアで料理を学びたい気持ちになり、修行するための渡航を決意した。

「最初は学校に通いました。プーリア料理のスターシェフと一緒に料理をしたり、オリーブ畑の見学に出かけたり、パスタ工場やチーズ工房にも見学に行きました。授業は楽しかったですね」(大志郎さん)

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