世界レベルになった「日本のパン」最前線 老舗の名物から最新ベーカリーの作品まで
ビジネスの中心地であり、流行発信地でもある港区。そこで愛されてきた老舗の名物パンから最新ベーカリーの挑戦を、パンライターであり「パンラボ」を主宰する池田浩明氏が読み解く。ふっくら香ばしいパンのケーススタディ、またはパンの豆知識を召し上がれ。
1960年代、海外の食文化が日本の食卓へ
人、マネー、情報が集まる港区。そこでは、ゴージャスさやクリエイティビティを表現するポップアイコンとして、時代を象徴する新しいパンが生み出されてきた。いつの時代もシーンの最先端にいた港区のパンの過去を振り返ることは、そのまま日本のパンの歴史になるだろう。
たとえば1966(昭和41)年、表参道に「ドンク青山店」がオープン。フランスから招いたフィリップ・ビゴ氏が焼く、フランスそのままのバゲットがブームに。青山通りはドンクの紙袋に入れた長いバゲットを小脇に抱えて闊歩する人であふれた。
1970(昭和45)年、今度は表参道交差点にコペンハーゲンそのままのデニッシュを標榜する「青山アンデルセン」がオープン。ドンクとともに人気を二分した両店は、いまは姿を消している。流行発信地・青山の消長の激しさがわかるというもの。