日本の女子へ、1年間自由に過ごせ!旅に出よ リンダ・グラットン「聖心女子大学」特別講義

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グラットン:人々の長寿化が進むと、制度が変わらなければならなくなります。しかし、個人の願いと実際には時差がありますね。

まずは教育制度を再構成しなければなりません。祖父母の世代は人生の一時期に勉強し、そして仕事をして、60歳ぐらいで定年を迎えるというパターンがほとんどでした。でも、もう今は変わっています。1つの変化はテクノロジーです。次々と急速に変化するようになりました。

リンダ・グラットン/ロンドン・ビジネススクール教授。人材論、組織論の世界的権威。リバプール大学にて心理学の博士号を取得。ブリティッシュ・エアウェイズのチーフ・サイコロジスト、PAコンサルティンググループのディレクターなどを経て現職。組織のイノベーションを促進する「Hot Spots Movement」の創始者であり、85を超える企業と500人のエグゼクティブが参加する「働き方の未来コンソーシアム」を率いる(撮影:今祥雄)

そして、多くの方が100歳まで生きることになるわけですから、もう人生の若い時期だけに教育を受けるというやり方ではうまくいかなくなります。40代、60代、70代と生涯学び続けなければならないでしょう。

昨年、私は安倍政権が掲げる「人生100年時代構想会議」の委員になり、すべての年齢層の人が生涯にわたって教育の機会を得られるようにするべきだと提言しました。たとえば、シンガポールには、あらゆる市民が政府から支援を受けて、ある程度の生涯学習を受けられるという制度があります。

日本の大学はまだそこまで追いついていませんから、それぞれが自己責任で学び続ける必要があると思いますが、今後はオンラインで学ぶ機会なども増えるでしょう。eラーニングやYouTubeが洗練されて学びの場になるでしょうし、実際、オンライン教育には何十億ドルもつぎ込まれています。

「ギャップイヤー」をとって旅をせよ

澤野:日本の大学生の最大の心配事は、どこに就職できるかということです。大学3年生の途中からみんな同じリクルートスーツを着て、一斉に就職活動を始めるんです。

グラットン:イギリスでも職探しのときは黒いスーツを着ますよ。みなさん就職は心配ですよね。大学を出たらすぐに仕事がなければならない、と。でも考えてみてください。日本人は強い立場です。どの会社も人手不足が問題だと言っていますから、なんらかの仕事は絶対に見つかります。問題は、「どんな仕事がしたいのか」です。

そのために私は、学生たちに「旅をしなさい」と言っています。就職は心配しなくてもいずれ見つかるのですから、まずは世界の仕組みを理解すること、自分がどんな人間なのかを理解すること。そして、人生がどんな形で展開していくかを理解することですよ、と。

「ギャップイヤー」という言葉があります。卒業後すぐ働くのではなく、1年間自由に過ごすことです。私も学生の頃には世界中を旅しました。ロンドン、シリア、イスラエル……私の息子もギャップイヤーでムンバイやシンガポールを旅させました。

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