もう1つ、「How are you?」というあいさつについて。日本の学校では「How are you?」に対しては「I’m fine, thank you」と回答するように教えられます。実際「How are you?」はほぼ毎日使われるフレーズです。
しかしその返しはと言うと「I’m fine」はダメではありませんがあまり使っていない、ちょっとお堅い印象です。「I’m good!」「Pretty good」という返しが一般的な気がします。なお、まれにですがHow are youは文字通り「あなたはどういう具合ですか?」に使われることもあります。
その国で住んでいないと身に染みない言葉がある
これはジョークにもなっているエピソードですが、交通事故を起こした相手が駆け寄ってきて「How are you?」つまり「大丈夫ですか?」と聞いていたのに対し、「I’m fine, thank you」と返したとか。このエピソードが事実か創作なのかはわかりませんが、テンプレート的に会話を丸暗記していると陥るミスの例としては覚えておきたいですね。
日本語は逆に1つの単語にいろいろな意味を持たせる場合があるように感じます。たとえば私の好きな古典では「あはれ」という言葉が非常に多く出てきます。現代語の「哀れ=かわいそうだと思う心」という意味以外にも、たくさんの意味があることはご存じの通りです。
ですが、「あはれ」という言葉が持っている雰囲気というものは、おそらく長く日本で生活をしていないと、辞書を読んだだけでは理解されないと思いますし、これを英語に置き換えてもその微妙なニュアンスまでは伝わらないのと同じことです。
私は幸い、英語圏に生まれて、その後日本語に親しむ機会に恵まれましたので、2つの言語と2つの生活圏を比較的深く理解できているほうではないかと思います。ここまで書いてきたように、辞書や翻訳では埋めきれない「ギャップ」も多く感じてきたからこそ、自分がその橋渡し役になれれば、と思うようになりました。
これからの時代、人工知能が発達し、通訳も翻訳もどんどん便利になることが予想されます。しかし、こうした文化のギャップを相互に理解することは、今後ますます重要になるのではないでしょうか。
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