6つ目は「本物志向」である。
本物を見ること。これがフィンランド流の教育だ。子どもだからといって、子ども用の図鑑を使用しない。理科や社会は、教室内で学習することに限界があるため、森や湖に行き、体験型の学習を行う。そこで珍しい植物などはすぐにタブレット端末でその場で検索し、シェアをする。
こういった学びは「セカンドオフライン」と言い、ポストモバイル社会におけるそのスタイルは理科、社会、情報と結びつける「プロジェクト型授業」でもある。
本物にたどりつくためには、ネット上の翻訳機能や翻訳ソフトを使うのではなく、その国の言葉で読むことができるようにすることが、フィンランドの教育の特徴である。2020年から外国語(英語その他)または第2母語・国語(フィンランド語が母語であればスウェーデン語)が小学1年生から必修になるという。選択授業も多いため、生徒のやる気次第では小学校の段階で7カ国語を勉強することだって可能である。
フィンランドの教員はルールに縛られない
7つ目は「裁量主義」である。
フィンランドでは教科書検定制度が廃止され、教材も教員が自由に選べる。学校での教育指針となる学習指導要領も事細かく書かれておらず、量も少ない。教員や学校の裁量が大きいのだ。日本でも同じようにしたほうがいいと筆者は考えているが、そう簡単にはいかない。なぜなら、教員が受け持つ生徒数があまりに違うからだ。
筆者がフィンランドで視察した学校では、ほとんどの授業が20人以内で行われ、20人以上いる場合には補助教員がいた。大学院を出た教員が、教育方法の研究を積極的に行いながら教育を実践する――。これがフィンランドの教育のベースとなっている。日本の学校では1クラス当たり40人程度で構成されるため、教員の負担が倍以上とも言える。
フィンランドは歴史的に、社会の危機に直面することで教育をどんどん更新してきた。対する日本は、経済バブルが崩壊して以降ずっと危機に直面しているにもかかわらず、教育はほぼ変わらないまま数十年が過ぎ去ってしまった。
フィンランドの教育に見られる7つの特長を参照し、日本の教育を変革する一助とされたい。
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