サンタの国が学校に用意する「7つのギフト」

フィンランド教育の知られざる最新事情

4つ目は「労働環境」である。

日本では近頃、教員の過労が問題になっている。教育とは関係のない業務を多く担わされ、それが多忙化の原因と指摘されているが、フィンランドの教員たちはそれとは無縁のようだ。

生徒たちの登下校が最もわかりやすい例だろう。

日本では、学校側が生徒の登下校を見守ることが当たり前となっているが、フィンランドでは学校や教員の仕事とはみなされていない。学校外では何が起きたとしても責任を問われない。教えることを仕事の主としている教員は本来、勤務時間以外に生徒や保護者に対応する義務はない。

極論、登下校時に生徒が煙草を吸ったとしても、教員がそれを見たとしても学校で問題になることはない。実際、教員が通学路を点検するといった日本での災害後の対応が報道された際、フィンランドの教員たちは驚いていた。

フィンランドでは、仮に生徒が問題を起こしたとしても、専門のカウンセラーが対応することになる。勤務時間外に生徒の自宅に電話するなどもってのほかである。ネットや学校外の問題は学校とは関係ないとみなされている。

教員たちが働く職場も日本とは大違いだ。

日本では学校の職員室は静かにするという雰囲気が少なくないが、フィンランドはその逆である。休み時間の職員室は教員たちが情報交換する声でにぎやかだった。フィンランドの職員室はさながらサロンのようで、インテリアも洗練されていた。コーヒーを飲んだり、クッキーをつまんだりしながら授業の手応えや生徒の様子を語り合う教員たちの姿が印象的だった。

筆者が「日本の職員室はとても静かで会議も多く、夜遅くまで教員が仕事をしている」と話すと、フィンランドの教員たちにびっくりされた。教員は授業で教えることのみに専念できる環境にある。それは、ひいては子どもたちへの教育の充実につながる。

フィンランドでは学校の見える化が進んでいる

5つ目は「透明化」である。

これはICT化や労働環境とも連動する話だが、筆者が視察した学校では授業の映像をネット上で公開していた。保護者は授業の様子を見られるため授業参観が減り、教員の負担が軽減される。

筆者がフィンランドで友人とタクシーに乗っているときに、スマートフォンのアプリを見ていた友人が「今、息子が表彰された」と言った。そう、学校の様子がリアルタイムでわかるのだ。

これは、教員が生徒たちの情報をクラウドに上げているためで、保護者はスマートフォンでいつでも学校や子どもの状況を確認できる。必要事項があれば、そこに書き込める。授業や郊外学習での持ち物の連絡はもちろんのこと、宿題もアップされている。

教員には生徒の出席状況や個人情報を把握し、つねに更新することが求められる。首都のヘルシンキ市が所有するシステムを使い、生徒の出席状況や成績・態度の良し悪しに関する情報を入力するほか、生徒や保護者と連絡を取り合う。これらの情報は保護者がいつでも閲覧できるようになっている。

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