2つ目は「ICT化」である。
フィンランドではICT化が日本とは比較にならないほど進んでいる。筆者が2016年に現地の高校を訪れたとき、「ヘルシンキでは高校1年生の生徒から全教科のテストがオンライン上で行われることになった」と聞き、驚いた。
高校生は学校でノートパソコンが必携なのだ。2015年に現地を訪れた際には、数学のテストだけがオンラインだったため、たった1年で全教科まで対象を広げたことになる。しかし、これでも北欧の国の中ではICT化は進んでいないほうである。
筆者が訪問した高校では、授業でタブレット端末を1人1台与え、必修となっている哲学の授業とプログラミングの授業を合わせて実施していた。生徒たちはウェブ画面に示されている宿題にアクセスし、宿題を確認したり、教科書を読んで教員の説明を理解しようとしたりしていた。
教材もパソコンがあればどこにいても見られる。小学生であっても、スマートフォンのアプリから前回の授業だけでなく、宿題や次週の授業内容を確認することも可能である。日本ではいまだ、重い紙の教科書を教室に置いて帰ることすらままならないことを考えると、雲泥の差である。
フィンランドでは教科を横断する勉強が主流
3つ目は「プロジェクト型授業」である。
たとえば日本では、算数や数学の授業で使われる教科書に書いてある公式を覚え、それに準じて問題を解いていく。日本人はこれを当たり前のものとし、今でもこの方法をとっている学校が少なくないであろう。
これに対してプロジェクト型学習は、さまざまな教科を横断する内容である。機械のように学ばせるということはない。フィンランドの教育現場では、どうしてその公式が成り立つのかを子どもたちにしっかり考えてもらうよう指導する。こうすることで数学的リテラシーを高められる。よって、公式を忘れても、試験が終わっても、社会に出てからも、その学習内容が生かされる。
現地の教員たちに話を聞いたところ、生徒が問題を誤答した内容や正答した結果よりも、その思考プロセスを重視する傾向が見られた。教員が後から採点するよりも、その場で生徒が正誤をチェックするほうが、成績の向上が見られた例が多いとのことだった。
フィンランドでは、知識が豊富で論理的な思考を持つだけではもはや現代社会に対応できないとされている。数学的リテラシーを持ち、多くのデータを生活と結びつけながらシミュレーションでき、コンピューターで解析しながら創造力を発揮できる人物こそが、現代社会に求められているのだ。
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