プログラミングが「コミュ力」育成に効くワケ 機械と対話する能力が子どもを成功に導く

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プログラミング授業を通じて、コミュニケーションとは何かを考えるきっかけになる(写真:Fast&Slow/PIXTA)
小学校のプログラミング教育必修化に向け、子ども向けのプログラミング教室が盛況だ。そもそも、プログラミング教育にはどのような効果や意義があるのか。新井紀子・国立情報学研究所教授(『AI vs. 教科書が読めない子どもたち』著者)などとともに、プログラミング教育に関する有識者会議で委員を務めた奈須正裕・上智大学教授が解説する。

2020年度から小学校でプログラミング教育が必修化される。必修化に向けて議論を行った有識者会議は2016年6月16日付の報告書で、その趣旨について述べている。やや長いが、議論の出発点となるので正確に引用する。

子供たちが、情報技術を効果的に活用しながら、論理的・創造的に思考し課題を発見・解決していくためには、コンピュータの働きを理解しながら、それが自らの問題解決にどのように活用できるかをイメージし、意図する処理がどのようにすればコンピュータに伝えられるか、さらに、コンピュータを介してどのように現実世界に働きかけることができるのかを考えることが重要になる。
そのためには、自分が意図する一連の活動を実現するために、どのような動きの組合せが必要であり、一つひとつの動きに対応した記号を、どのように組み合わせたらいいのか、記号の組合せをどのように改善していけば、より意図した活動に近づくのか、といったことを論理的に考えていく力が必要になる。
こうした「プログラミング的思考」は、急速な技術革新の中でプログラミングや情報技術の在り方がどのように変化していっても、普遍的に求められる力であると考えられる。
また、特定のコーディングを学ぶことではなく、「プログラミング的思考」を身に付けることは、情報技術が人間の生活にますます身近なものとなる中で、それらのサービスを受け身で享受するだけではなく、その働きを理解して、自分が設定した目的のために使いこなし、よりよい人生や社会づくりに生かしていくために必要である。
参照:「小学校段階におけるプログラミング教育の在り方について(議論の取りまとめ)

つまり、小学校プログラミング教育が目指すのは、特定のプログラミング言語を習得し、それを用いてプログラムを書くコーディングではなく、コンピュータのあらゆる動作の背後にある基本的な論理の理解であり、独特な思考様式としての「プログラミング的思考」の感得なのである。

実は算数の授業ですでに経験済み

実は「プログラミング的思考」は、すでに在来の教科の中でもある程度培われている。その典型は、算数の筆算の論理、アルゴリズムであろう。

たとえば、基本となる2桁の引き算の筆算には、順次(上から下へと順番に処理を実行する)、分岐(条件を満たした場合に処理を実行する)、反復(条件を満たすまで処理を繰り返す)というプログラミングの3大要素がすべて含まれている。子どもたちは算数の授業を通して、すでに「プログラミング的思考」を経験しているのである。

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