プログラミングが「コミュ力」育成に効くワケ 機械と対話する能力が子どもを成功に導く

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それは、これまで子どもたちが経験してきた人間同士のコミュニケーションとはまったく異なる。このことに気付くのが、コンピュータとうまく付き合うための重要なポイントであり、「プログラミング的思考」の最初のヤマでもある。そしてそれには、実際にコンピュータとかかわる経験が不可欠だ。

さらに、コンピュータはこちらの働きかけに対して即時に、また何度でも正確に応答してくれる。このコンピュータの「応答的」な特質は、子どもが自律的に学ぶ学習環境として理想的ですらある。

紙と鉛筆では、施した修正が意図した結果をもたらすのかどうか、熟達した教師でも即座には判断しかねるし、繰り返される誤りや牛歩の歩みに、さすがにうんざりするであろう。

機械相手のコミュニケーションに意義がある

コミュニケーションという視点から見ると、今後、小学校では日本語、英語、プログラミング言語という3つの言語を用いたコミュニケーションを学ぶことになる。

多くの子どもにとって母語である日本語を用い、文化的背景が似た人たちと経験や感情、意見の交歓をする場合と、外国語である英語を足場に、文化的背景が異なる人たちと意思疎通を図ろうとする場合、さらに日本語や英語のような自然言語ではない、人工言語であるプログラミング言語を使ってコンピュータに指示を出す場合とでは、そこで展開されるコミュニケーションの様相や注意を要する点、趣やよさ、生じる経験などはすっかり異なってくる。

この3つの違いをしっかりと感受し、さらに比較・統合できるよう授業やカリキュラムを工夫することで、子どもたちはコミュニケーションという営みとそれを媒介する言語に関する、多くの学びを実現していくだろう。そこから翻って、日本語ならではの以心伝心のよさに改めて感じ入り、いかにも英語的な言い回しや独自な発想の面白さに目を見張り、機械とのかかわりならではの、曖昧さが皆無であるという特質に気付くのである。

このような可能性のためにも、コンピュータという機械を相手に、プログラミングというコミュニケーションを経験することには、大きな教育的意義があると言えよう。

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