「寝落ち電話」をSNS投稿するカップルの心理 若者の間で広がる新たな自慢の一形態

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従来までの若者は、自分に彼氏(彼女)がいるのかどうか、友達がたくさんいるのかどうか、などといった人間関係の広がりについて、SNSを通じてそれとなく公開してきた。そこでアピールされてきたのは「友だちの多さ」「恋人の有無」といった表面的なものであったかもしれない。

しかし、3つの間接自慢の事例に見られるとおり、今の若者が価値を置くポイントは少し変わってきているかもしれない。すなわち、自分の周りをとりまく人間関係の「深さ」に価値を置き、人にも伝えたいと思っているのではないだろうか。

原田の総評:”深さ”を間接自慢したい若者たち

現場研究員のリポート、いかがでしたでしょうか。それぞれの事例とも、「今の若者らしい特徴・事情」と、SNS以降に生まれた若者文化である「間接自慢」が、うまく掛け合わされて新しい事例となって広がっていることがわかります。

例えば、「寝落ち電話」は、通話無料のLINEが普及しなければ生まれなかった事例だと思います。LINE以前の若者たちは、携帯電話代を過剰に気にして、なるべく通話をしないようにしていました(逆にだから、今や世界的にミレニアル世代の文化となったメールの絵文字や顔文字が生まれた)。

ところが、LINEが普及して以降、カップルが寝落ちするまで通話をし続けるといった、「贅沢なまでの長時間通話ニーズ」が生まれ、ラブラブ状況を他者にも見せびらかしたいという間接自慢が掛け合わされ、この事例が生まれていることがわかります。

「彼親デート」は、前提として、今の若者たちは両親との関係が非常に密接になってきていることがあります。それに伴って、交際相手の親との関係も大変よくなっており、こうした状況と間接自慢が掛け合わさり、新しい事例が生まれています。

「シミラールック」にも背景があります。大体ここ5年以上10年未満くらいでしょうか、若者たちの間では、「ニコイチ」「サンコイチ」「おそろコーデ」など、友達や恋人やサークルなどの集団で、おそろいの服を着ることが流行っていました。しかし、皆がおそろコーデをやると、ちょっとその行為がありきたりでダサい行為と認識されるようになっていきます。こうした、「おそろコーデはしたいけど、まったく同じだとダサい」という若者の複雑なニーズと間接自慢が掛け合わさり、この事例が生まれていることがわかります。

いずれにせよ、読者の皆さんも、自社商品やサービスによって、若者たちが新しい間接自慢ができるように仕組むことができると、自社商品やサービスがヒットするだけではなく、若者たちの新しい習慣や行為や文化を生み出すことにつながっていくかもしれません。

原田 曜平 マーケティングアナリスト

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はらだ ようへい / Yohei Harada

1977年生まれ。慶応義塾大学商学部卒業後、博報堂に入社。ストラテジックプランニング局、博報堂生活総合研究所、研究開発局を経て、博報堂ブランドデザイン若者研究所リーダー。2018年よりマーケティングアナリストとして活動。2003年、JAAA広告賞・新人部門賞を受賞。著書に『平成トレンド史』『それ、なんで流行ってるの?』『新・オタク経済』『寡欲都市tokyo』などがある。YouTubeはこちら

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