満室でも予約可能なサイトが騙し取ったお金 中国の大手宿泊予約サイトで問題は起きた

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しかし、宿泊施設とトリップドットコムの間で契約の有無にかかわらず、この機能によって、通常価格の2倍以上という非常に高額、さらにキャンセル料は100%で販売しており、実際には宿泊施設側には手配の連絡をしていなかった。トリップドットコムは声明で、「オンリクエスト」での回答待ちなどの予約確定前の取り消しでは全額返金していると主張している。

伊豆地方のとある旅館の予約客は、「オンリクエスト」状態だったものの、予約確定メールを受け取ることができた。だが、宿に連絡したところ部屋は確保されておらず、慌ててトリップドットコムのコールセンターに連絡し、キャンセルを申し出た。

客とトリップドットコムのやりとり

だが、「予約確定しているのだから無料キャンセルはできない」として、「それ(チェックイン)までに(部屋を)用意するし、用意できなければ返金するからそれまで待て」という回答を得たという。これは実質的な「オンリクエスト」状態であるにもかかわらず、キャンセル料を収受していることになる。

予約確定までの時間を守らず、宿泊日直前まで放置するケースもあった。日本の宿泊施設では宿泊日に近づくに従ってキャンセル料が高くなるのが一般的で、キャンセル料がかからないギリギリにキャンセルする人も多い。つまり、トリップドットコムはそれらのキャンセルされた予約をほかのOTAで予約し、自社で受け付けた割高な予約とすり替えることで、その差額を儲けていたのではないかとみている。

もしトリップドットコムが部屋を確保できなければ、「予約は確定しなかった」として利用者に返金すればよく、予約が確定せずに不安になった利用者がキャンセルをすれば、100%のキャンセル料を得られることになる。さらに宿泊施設側はこれらの事実を知らないため、キャンセル料を徴収することなく、すべてトリップドットコム側の儲けとなる。トリップドットコム側にリスクはない。

トリップドットコムは宿泊施設に向けた文書の中で、「本来お宿様と直接契約が無い旅行会社が、契約商品であると偽り、当該商品をCtrip側に掲載していること」を原因として、「法外な金額を掲載している」として第三者の旅行代理店の行為であると主張。

一方でその旅行代理店の名前は明かしておらず、実在するかもわからない。「本来の趣旨を理解していない悪意ある会社に対しましては、随時摘発し永久的に取引停止の処置を行います」とした。

利用者としては、「残り1室」という文言に釣られて予約時点で宿泊施設が確保できたと考えていれば、宿泊日直前のキャンセルによって、すぐに代わりの施設を探さなければいけなくなる。タイミングによっては宿泊施設が確保できないということもありうる。

予約ができていないことを知らずに宿泊施設を訪れてしまったらさらなる不幸が訪れる。夜、やっとの思いでたどり着いた宿泊施設で満室と告げられたところで、年末年始などの繁忙期に近隣の宿泊施設が確保できる可能性は極めて低いだろう。

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