『ブルー・トレイン』には、5曲収録されています。そのうち4曲はコルトレーンのオリジナルです。作曲家としての力量も証明しています。タイトル曲「ブルー・トレイン」で始まります。コルトレーンの書き下ろしです。
冒頭、カウントも何もなく、いきなり主題が奏でられます。
B♭→D♭→F→D♭→E♭
この4つの音が醸し出すブルーな空気は、言葉にしきれません。すべての音が収まるべきところに収まっているのです。
コルトレーンのテナー・サックスとリー・モーガンのトランペットが、静寂な闇を静かに切り裂きます。すると、ケニー・ドリューのピアノ、ポール・チェンバースのベース、フィリー・ジョー・ジョーンズのリズム隊3人が、E♭→E♭と呼応します。ゴスペル教会での礼拝のようなコール・アンド・レスポンスです。
そこに、カーティス・フラーのトロンボーンが加わり3管編成となり、和音を展開し、ハーモニーを凝らしながら、合計12回のコール・アンド・レスポンスで主題を終えます。ここまでで、すでにアンサンブルの美しさで魅了されます。が、ここからジャズの神髄たる各楽器の即興演奏へと突入していきます。
圧倒的な即興演奏の3つの魅力
コルトレーンといえば、強力な即興演奏です。3つの特徴があります。
第1に、音色です。力強くてつやっぽく深淵な音色です。ある著名なアナウンサーが「声は人なり」と言っていましたが、サックスは、人の声に近い楽器です。まさにコルトレーンの人となりがにじんでいるようです。
そこで、コルトレーンの人柄ですが、「聖人君主」と決して単純には言えません。若い頃は、麻薬にはまってそうとう大変な時期もあったのです。
実は、チャンスに恵まれず知名度も低く売れなかった頃、コルトレーンの才能を見抜き引き上げたのはマイルス・デイヴィスです。そこで、知る人ぞ知る存在となりますが、麻薬の問題で、マイルス楽団をクビになってしまいます。その後も麻薬禍に沈みます。しかし、30歳にして、ついに酒、たばこ、麻薬を断つ決心をします。地獄をみてそこから帰還した人間だけが持つ寡黙な深みが音色に反映しています。
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