「弁慶濠」と「高速道路」が同居する風景 江戸城の外濠は東京のオアシス?

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江戸時代の地形が残る水辺の風景と、ビルや高速道路の現代的な風景とのコントラストが特徴的な弁慶堀(写真:泉 大悟)
都心にもまだ残っている広大な緑地。江戸東京の水辺を再発見するため、紀尾井町(千代田区)に本社を移したヤフー株式会社のブランドマネジメント室リーダー、和気洋子氏に話を聞いた。

外濠に興味を持つようになったのは、勤め先であるヤフーの本社移転がきっかけです。2016年に、六本木から紀尾井町に越してきたのですが、同じ東京とはいえ、まちの雰囲気が全く違う。まず、緑が豊かです。周辺には皇居や赤坂御用地があり、ホテルニューオータニの広大な日本庭園もあります。会社のある東京ガーデンテラス紀尾井町は、湧水が復元された清水谷公園と弁慶濠に隣接していて、水辺環境も豊か。さらに、もともと江戸時代には、大名屋敷が軒を連ねていた場所だからでしょう。周辺の建物はどこも敷地が広く、まち全体が落ち着いた雰囲気になっています。紀尾井町は、地名の由来になった紀伊徳川家、尾張徳川家、彦根井伊家という錚々たる面々の屋敷があった場所です。

毎日眺めると、日によって水の色が違う

本記事は『東京人』2019年1月号(12月3日発売)より一部を転載しています(書影をクリックするとアマゾンのサイトにジャンプします)

実は私は学生時代に歴史学、それも江戸時代を専攻しておりまして。会社がお世話になる場所ということで、周辺地域のことをいろいろ調べてみると、外濠に関する活動や市民講座があることを知り、参加するようになりました。そこで、会社の周辺にも、江戸城外郭の赤坂御門跡の石垣など、江戸時代を感じられる場所がたくさん残っていることに気づきました。最近は、外濠に沿って都内を散歩するようにもなりました。今まで入ったことのなかった皇居にも興味が湧き、先日も見学してきました。同じ外濠でも、場所によって表情が違うのが面白いですね。

弁慶濠は、石垣が一部きれいに残っていて、石垣周りには散策路も設置されています。この散策路から弁慶濠を眺めると、横に首都高が走り、周囲には高層ビルが建ち並んでいる。江戸と現代が同居しているような、東京でしか見られない風景がお気に入りです。オフィスの窓からも弁慶濠を真下に見ることができるので毎日眺めていますが、日によって水の色が違うんです。弁慶濠は藻が多いためフォトジェニックとは言いづらいのですが、この藻があるおかげで水質もよく、透明度も高いんですよ。

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