遊女の面影をもとめて、吉原の「今」を歩く カストリ書房店主×歴史タレントの遊廓対談
五十間道で今なお味わえる非日常感
渡辺:堀口さんがはじめて吉原のまち歩きをされたのはいつごろですか?
堀口:中学生のときでした。樋口一葉の『たけくらべ』を読んで、実家から近かったこともあり、親戚に頼んで連れてきてもらったんです。もう、すっごく感動しました! 見返り柳や五十間道の曲がり角を見て、「まだ江戸時代の形が残っているんだ!」とうれしくなったのを覚えています。
渡辺:私もはじめて五十間道のカーブを見たときは萌えました(笑)。ただ、実際に吉原には、江戸時代の建物などはほとんど残っていないんですよね。これは関東大震災や戦災の影響なので、東京のまち全般に言えることですが。それでも面影はいろんなところに見られますし、堀口さんが見返り柳を見て感動したように、小説で読んだ世界が絵空事ではなく、リアルにそこにあるというのは、歴史や物語を追体験するような喜びがあります。
堀口:はい。今回も渡辺さんと一緒にまち歩きができたことで新たな発見がいくつかあり、とても楽しかったです。
渡辺:では、順を追って吉原のまち並みを辿っていきましょう。まず土手通りの吉原大門の交差点の一角に、吉原の“外”の象徴でもある見返り柳があります。かつて吉原から帰る際に、柳の前で名残惜しんで振り返ったことから、このような名前がついたという説があります。現代の若い方は、「そもそもなぜ、ほかの木ではなく柳なのか」と思うでしょうね。女性の細くてしなやかな腰を「柳腰」と言いますが、そんな言葉すら、今ではあまり聞かれくなってしまいました。柳については諸説ありますが、中国の廓をモデルにして、日本でも廓のまわりを柳で囲んだとも言われています。
堀口:次に、見返り柳から仲之町通りへ向かって進むと見えてくるのが、私たちが感動した五十間道(笑)。もともとはまっすぐな道を作る予定だったのが、町奉行の指導が入って曲げることになったそうです。
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