遊女の面影をもとめて、吉原の「今」を歩く

カストリ書房店主×歴史タレントの遊廓対談

千束4丁目の交差点にある「大黒屋」の前を歩く、渡辺豪さん(左)と堀口茉純さん(写真:藤原江理奈)
吉原で遊廓専門の書店を営む渡辺豪さんと、生粋の”歴女”である堀口茉純さんの対談をお送りする。吉原のまちを愛するふたりが、遊女の面影を追う歴史散策へ!
渡辺豪(わたなべ ごう)/「カストリ書房」店主。1977年生まれ。2011年ごろから独自に全国の遊廓や赤線跡を取材。2015年に「カストリ出版」を設立し、翌年「カストリ書房」をオープン。吉原のまちを渡辺さんが自ら案内する「吉原遊廓ツアー」が好評。全国で風俗史に関するイベントも展開。
堀口茉純(ほりぐち ますみ)/歴史タレント、歴史作家。1983年生まれ。女優として活動するかたわら、”江戸に詳しすぎるタレント”として、執筆、イベント、講演会など多分野で活躍。著書に『吉原はスゴイ』『『江戸はスゴイ』『TOKUGAWA15』など。

五十間道で今なお味わえる非日常感

渡辺堀口さんがはじめて吉原のまち歩きをされたのはいつごろですか?

本記事は『東京人』2018年11月号(10月3日発売)より一部を転載しています(書影をクリックするとアマゾンのサイトにジャンプします)

堀口:中学生のときでした。樋口一葉の『たけくらべ』を読んで、実家から近かったこともあり、親戚に頼んで連れてきてもらったんです。もう、すっごく感動しました! 見返り柳や五十間道の曲がり角を見て、「まだ江戸時代の形が残っているんだ!」とうれしくなったのを覚えています。

渡辺:私もはじめて五十間道のカーブを見たときは萌えました(笑)。ただ、実際に吉原には、江戸時代の建物などはほとんど残っていないんですよね。これは関東大震災や戦災の影響なので、東京のまち全般に言えることですが。それでも面影はいろんなところに見られますし、堀口さんが見返り柳を見て感動したように、小説で読んだ世界が絵空事ではなく、リアルにそこにあるというのは、歴史や物語を追体験するような喜びがあります。

堀口:はい。今回も渡辺さんと一緒にまち歩きができたことで新たな発見がいくつかあり、とても楽しかったです。

見返り柳。五十間道のはじまりの地点にある柳。樋口一葉の『たけくらべ』の冒頭部分や落語の『明烏』などにも登場する。吉原に詳しくなくとも多くの人に知られている、この地のシンボル(写真:藤原江理奈)

渡辺:では、順を追って吉原のまち並みを辿っていきましょう。まず土手通りの吉原大門の交差点の一角に、吉原の“外”の象徴でもある見返り柳があります。かつて吉原から帰る際に、柳の前で名残惜しんで振り返ったことから、このような名前がついたという説があります。現代の若い方は、「そもそもなぜ、ほかの木ではなく柳なのか」と思うでしょうね。女性の細くてしなやかな腰を「柳腰」と言いますが、そんな言葉すら、今ではあまり聞かれくなってしまいました。柳については諸説ありますが、中国の廓をモデルにして、日本でも廓のまわりを柳で囲んだとも言われています。

堀口:次に、見返り柳から仲之町通りへ向かって進むと見えてくるのが、私たちが感動した五十間道(笑)。もともとはまっすぐな道を作る予定だったのが、町奉行の指導が入って曲げることになったそうです。

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