世界各国でプレミア価格を享受する寿司レストラン
なお寿司は、もうどうしようもないくらい日本的であり、日本人がやることで高いプレミアムがつく食材である。先日もギリシャのアテネで寿司ショップにはいったのだが、数年前にギリシャ人と結婚してアテネにきた、という40歳くらいの女性が店員さんとして働いており、日本食レストランだとギリシャ語ができなくても雇ってもらえる。むしろ日本語しか話せない、というのが“ローカルな本場仕込みの日本食レストラン”というプレミアムな雰囲気を醸し出していた。
かつ日本では当たり前で、ヨーロッパでは異例なのだが少し手を挙げれば(むしろ挙げなくても)すぐその日本人の店員さんは笑顔で走ってきてくれるし、だらだら店員同士で談笑せずにお客さんの様子を常にうかがってくれるし、出ていくときも丁寧にありがとうございました、と言ってくれる。お皿も綺麗で、おしぼりも臭わない。
このように日本的なサービスのできる日本食レストランはヨーロッパでは稀有であり、それができているお店は多分にもれず大繁盛している。つまるところ、日本では780円の定食屋さんで普通に提供されている当たり前のサービスが、海外では3000円稼げる上、感動と畏敬の念をもって迎え入れられるのである。
日本人が寿司屋で稼げていない問題
こんな日本の寿司に対する需要は世界的に拡大しているが、サプライヤーはその大半が日本で寿司を食べた外国の方々が、カッサカサのサーモンができそこないのコメの塊に、間違った酢と醤油の調合割合でだされてくる寿司もどきを売って大儲けしている。つまり寿司の世界化に成功したのだが、それを日本人が十分ビジネスに結び付けられていないのだ。私は日本食文化の輸出という、日本にとって大きなチャンスが活かされていないと思う。
様々な日本の伝統的産業がグローバル競争にさらされているが、寿司だけは日本人が未来永劫にわたって国際的競争力を持ち続けるのが目に見えているコア産業だ。またさまざまなややこしい食材と調味料を時間たっぷりかけてつくらなければできない他の日本食とちがって、寿司は材料もシンプルであり、美味しい寿司の味と作り方とサービスの方法を知っている大多数の日本人にとって三顧の礼で世界中に迎えられる仕事だろう。
先日、すしチェーンのスシローがプライベートエクイティファンドと組んで企業の改革と成長に稀に見る大成功をおさめ、ヨーロッパ系ファンドのペルミラに非常な高額で売却されたが、私は当初、ペルミラが高すぎる値段を払ったと思っていた。だが、ヨーロッパ各国で高まる寿司への需要と満たされていないサービスを鑑みた時、スシローのヨーロッパ進出も支援するだろうペルミラは、大儲けするのではと思うようになった。
日本の寿司は世界中で求められているが、日本人はこの好機をフルにマネタイズすべきである。また日本人が提供する質の高い寿司のクオリティを世界中に広げることは、世界の食文化の発展に大きく貢献する偉業となるだろう。
失業で仕事がなくて困っているヒトや海外で働きたい人は、ひとまずポーランドに来て寿司を握ってみてはいかがか。
数年後にあなたがヨーロッパ中に広がる一大寿司チェーンを経営する羽目になったら、私が行った時に特上のウニと赤貝を出していただきたい(私は何を隠そう、ウニと赤貝が大好きなのだ)。
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