米中首脳会談で「ディール」は本当にあるのか 2018年を象徴する漢字は「大」かもしれない

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などという年の瀬、貿易の世界では今、思いがけないことが起きている。なんと日本発の貨物船の調達がままならなくなっているのだと。なぜかと言うと、荷主さんたちは是が非でも年内に中国の商品をアメリカに届けたい。

だって現在、10%の関税をかけられている2000億ドル分の対中輸入品が、1月1日を超えると25%になってしまうから。15%の値上げはさすがに痛いので、年内の駆け込み需要が発生している。お蔭で船が足りなくなって、日本からアジア向けの船積みが支障をきたしている。米中間の貿易戦争は、当然、他国にもしわ寄せがくるというわけだ。

いよいよ当面の決戦「G20」が近づいてきた

となると、気になるのは11月末からブエノスアイレスで行われるG20首脳会議だ。前回、お話を伺ったアーサー・クローバー氏 は、「トランプ大統領がG20で習近平主席とディールをしようとする可能性は50対50くらいある」と言っていた。月末の米中首脳会談の席で、トランプ氏は中国に強く出る「タフガイ」になるのか、それとも「ディールメーカー」を目指すのか。

思えばこの2カ月間、アメリカ側のゲーム回しは見事なものであった。10月4日にはマイク・ペンス副大統領が、ワシントンDCのハドソン研究所で「対中政策演説」を行った。経済や安全保障の問題にとどまらず、中国の国民監視体制、宗教弾圧、「借金漬け外交」に果てはハリウッド映画への圧力まで取り上げて、中国を強烈に非難した。アメリカと中国の両方でビジネスをしている企業、すなわちほとんどのグローバル企業はこれで戦々恐々となった。この演説、どうやら各分野の政策スタッフたちがボトムアップで練り上げた作品のようで、最近のアメリカ国内の反中ムードをよく表している。

そしてそのペンス副大統領が、東アジアサミット(シンガポール、11月15日)、APEC首脳会議(ポートモレスビー、11月17-18日)へ代理出席した。ポートモレスビーでは習近平国家主席の面前で、「アメリカは、首が締まるようなベルトや一方通行の道路は提供いたしません」と言ってのけた。「一帯一路」構想に対する強烈な嫌味である。

ちなみにこの「一帯一路」構想、英語表記はもともと”One belt, One road”という直訳であった。ところが「おいおい、すべての道は北京に通じると言いたいのか?」といった批判があったらしく、最近では”The belt and road”に変えられている。ペンス副大統領はこれを”Constricting belt and one-way road”と呼んだわけだ。

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