米中首脳会談で「ディール」は本当にあるのか 2018年を象徴する漢字は「大」かもしれない

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さて、こうやってペンス副大統領が散々脅し上げたうえで、来週のG20ではご本尊のドナルド・トランプ大統領がお出ましになる。これは”Good cop/Bad cop tactics”と呼ばれる古典的手法なのかもしれない。すなわち先に悪い警官(Bad cop)が相手を脅し上げることで、後から出てくる良い警官(Good cop)が相手には「話の分かる人物」に見えてくる。中国からより多くの譲歩を得るために、わざと東アジアサミットとAPEC首脳会議を欠席し、代わりにペンス副大統領を送り込んだのだとしたら、いかにもトランプ大統領らしい。

こんなあざといやり方に対し、中国側は有効な反撃策が見当たらない。11月上旬にはヘンリー・キッシンジャー氏が北京を訪れ、習近平国家主席、王毅国務委員などと相次いで会談している。いくらアメリカ国内で親中派が見当たらないからと言って、御年95歳のキッシンジャー御大を頼らねばならない時点で、いったいどれだけ大勢の人に仲介役を断られたのかは想像に難くない。

米中首脳会談の「落としどころ」は?  

現在、水面下で行われている米中交渉では、中国側が知的財産権の保護強化や外資規制の緩和など142項目の対応策を提示し、アメリカ産のLNGや農産物の輸入拡大も約束しているという。トランプ大統領は第4弾の追加関税の可能性をチラつかせながら、満更でもなさそうな様子も垣間見える。

もっとも中国相手の交渉では、「142項目」みたいに数字が飛びだすときは要注意で、「本気で行動を改めるつもりはありません」と言っているようなものである。アメリカ側は「中国製造2025」のような産業政策や、南シナ海の人工島でのミサイル基地建設を問題視している。ただし中国側もそこまで譲歩するつもりはないだろう。

結局、来たる首脳会談では中国側が対米譲歩を小出しにし、アメリカ側は「対中制裁関税は解除しないが、新たな追加制裁も行わない」といった停戦協定を持ち出す辺りが基本線となるのではないか。トランプ大統領は「こんなに取ったぞ!」と戦果を強調するけれども、しばらくするとまた対中非難を始める……といった展開が予想される。もちろんそれだけでも、ホッと一息つく中国ビジネス関連業者はたくさんいるはずだが。

来たる首脳会談において、「米中の定期協議の場」を作ることが決まれば、これは望外の成功とみていいだろう。ただし米中戦略・経済対話を何年も続けた挙げ句、中国側の問題行動を変えられなかったという苦い思いがアメリカ側にはある。

ついついトランプ大統領の派手な言動に注目が集まりがちであるが、対中警戒意識の高まりはいわばワシントンの政策コミュニティ全体のコンセンサスと言える。貿易戦争から安全保障問題、さらにはハイテク業界での先陣争いまで、米中の対立時代は当分続くと考えておくべきだろう。(本編はここで終了です。次ページは競馬好きの筆者が、週末の人気レースを予想するコーナーです。あらかじめご了承ください)。

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