文科省スキャンダル「秘書通行証貸与」の焦点 なぜ面識のない人に貸与?

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通行証が霞が関での谷口被告の“信用”を高めたのではないかとの疑問も出たが、それは考えにくい。

そもそも自分に通行証を発行してくれる国会議員の名前をいちいち述べる例は聞いたことがないし、よほどの有力議員以外は公表するメリットもない。国会議員との関係を誇示するのなら、その名前を刷り込んだ名刺を見せるのがいちばん妥当だ。その際の肩書は、ほどほどに大げさなほうが効果がある。

私設秘書が事務所を代表するわけではない

仮に国会議員の私設秘書と誤解されても、それで事務所を代表するわけではないし、その推定も働かないのは永田町の常識だ。ましてや野党の議員事務所では、大物私設秘書が取り仕切ることはまずありえない。ほとんどの事務所では、公設秘書が責任者となっている。

公設秘書とは国会議員が公費で雇用できる政策担当秘書、第一秘書、第二秘書の3人で、その通行証に付いている徽章は衆議院の場合は桜、参議院は菊をかたどっている。

「衆議院は任期が短く解散もあるから、徽章のデザインは短期間でぱっと散る桜で、参議院は任期が長いから花が長くもつ菊になっている」というトリビアは、筆者が参議院議員の政策担当秘書だった頃、先輩秘書から聞いた話だ。

現在では帯用証とともに首から下げるようになったが、以前は徽章を胸に付けていた。もし公設秘書の徽章を紛失すると、始末書を書かなければならないばかりか、速やかに最寄りの警察に届け出なければならないと言われた。

旧議員会館時代には、参議院では公設秘書の徽章だけで国会や議員会館を自由に通行できた(衆議院を通行するには帯用証も必要だったが)ので安全上の理由だが、そればかりではない。先輩秘書から聞いた話では、公設秘書の徽章で金を借りることができたようだ。なるほど徽章を受け取った時、それが入っていた箱と徽章の裏側に識別番号が付けられていたのはそれゆえかと、妙に納得したことを覚えている。

これらの事実からも、公設秘書と私設秘書の待遇の差が大きいことが見てとれる。なお国会議員の私設秘書の定義はあいまいで、通行証のみで秘書とは言えない。後援会や支援団体に貸与している例はいくらでもある。その数は大物議員になるほど、多くなるようだ。

そうした人たちを「ブローカー」として怪しむのは早計だ。

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