安倍新内閣、いきなり「片山劇場」の帰結は? 自民党は早期決着、野党は引き延ばし作戦

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11月1日、衆院予算委で質問に答える片山さつき地方創生相(写真:共同通信)

10月24日に召集された臨時国会の序盤戦で、野党の「格好の標的」となったのが片山さつき地方創生・女性活躍担当相の「口利き疑惑」だ。『週刊文春』の特ダネ記事を受けたもので、「文春砲」らしい連続暴露攻撃に、片山氏は応戦し、文春を名誉棄損で提訴した。「事実なら議員辞職もの」と勢いづく立憲民主党など主要野党は、衆参両院での各党代表質問に予算委員会での片山氏への追及と、波状攻撃を展開。国会論戦は「片山劇場」(竹下亘前自民党総務会長)の様相も呈している。

相次いだ台風や地震など災害対応のための今年度補正予算案を審議している衆参予算委で、各野党の委員は繰り返し片山氏を追及しているが、「口利き」や「100万円受け取り」を否定する同氏は、文春などが指摘した詳しい事実関係には「訴訟中」を理由に答弁拒否を決め込む。

自民党内には「訴訟の効果は抜群」(国対幹部)と見る向きもあるが、「そもそも片山氏は訴えた側で、訴訟を隠れ蓑にするのはおかしい」(閣僚経験)との批判も広がる。このため、自民党内では「さっさとクビにしたほうがいい」(国対幹部)との声も出ている。だが、野党側は「疑惑を年明けまで長引かせるほうが得策」(立憲民主幹部)と、追及に時間をかける"焦らし(じらし)戦術"に傾きつつあるようだ。

疑惑をめぐる与野党攻防がねじれるのは、双方が来年の統一地方選と参院選への影響を意識しているからだ。「言い逃れは難しい」とみる自民党幹部は「政権への悪影響を考えれば国会審議が止まった時に腹切り」と早期決着を期待する一方、野党側は「時間をかけてじわじわと疑惑をあぶりだす」として、衆参予算委での追及も寸止めしている有様だ。このため、疑惑をめぐる攻防は当面、膠着状態となり、「片山劇場」の結末も見通せない。

片山氏は「口利き」も「金銭受け取り」も否定

週刊文春は10月25日号(18日発行)で片山氏の疑惑をトップ記事に仕立て「片山さつき大臣 国税口利き疑惑で百万円」との大見出しをつけた。具体的には、税制面でメリットを受けられる青色申告が取り消されそうになった会社経営者が約3年前に、片山氏の私設秘書とされる税理士に対応を依頼したのが発端。同税理士側が問題解決の着手金として100万円を指定した口座に振り込むよう求め、片山氏自身も国税庁関係者に電話をかけたという「疑惑」だ。

この疑惑について片山氏は「事実誤認」と主張し、自らの「口利き」と「金銭受け取り」を否定した上で、直ちに週刊文春を名誉棄損で提訴した。ただ、その間に私設秘書は取材に対して100万円を「税理士の業務として受け取った」ことを認めたとされ、文春にコピー写真が掲載された経営者への金銭請求の文書には「参院議員 片山さつき」と明記されていた。だからこそ、片山氏が経緯を知って対応したとすれば「あっせん利得処罰法に当たる」(立憲民主)との疑惑が浮上したわけだ。

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