氷河期に入った米国の個人消費、酷寒のクリスマス商戦に
「今年はクリスマスプレゼントを減らさないといけない」
2人の子どもを前に母親のデビーが切り出した。サン・マイクロシステムズから解雇されたばかりの父親のリチャードが「毎年1人100ドルの予算だったけど、今年は50ドルを上限にウィッシュリスト(プレゼントの要望リスト)を出してほしい」と、小声で子どもたちに伝えた。
クリスマス商戦が本格化する感謝祭(11月27日)前。米国の家庭では今年、こうした光景がよく見られるという。その感謝祭のご馳走ですら「七面鳥ではなく、安いチキンに替える家庭も少なくない」(スーパー店員)。米国の消費は完全に冷め切った状態にある。
米国の小売業界において、クリスマス商戦は年間売り上げの4分の1強を占める、まさに天王山。でも今年は「金融機関の貸し渋りが厳しくなる中で、家計や企業を圧迫して失業率が増加。個人消費に回復の兆しはまったく見当たらない」(小売業界アナリストのフランク・バディロ氏)状況。年末商戦の売上高予想は前年比1・5%増と、1991年以来の低い伸びとあって、今年は最悪のクリスマス商戦となりそうだ。
米国の失業率は6・5%(10月)と、現在16年ぶりの高水準にある。FRBの経済見通しによると、来年の失業率は7・1~7・6%に悪化する見通しだ。このような雇用環境の悪化予想が、消費者の財布のヒモをますます緩ませない。
シリコンバレーでも金融界の混乱を背景に、人員削減が続く。
サン・マイクロシステムズ(5000~6000人)、アプライド・マテリアルズ(1800人)、ヤフー(1500人)、Eベイ(1000人)、エレクトロニック・アーツ(500~600人)、AMD(500人)など、レイオフの嵐だ。新卒学生も仕事が見つからず、博士号を持つ経験者も仕事にあぶれている。
クレジットカードの保有者の中には債務不履行者が増えており、クレジットカード会社のキャピタル・ワンは2007年第4四半期に、19億ドルの貸し倒れとなった。10月時点で30日以内に支払えないクレジットカード借入額が前年比26%も上昇し、173億ドルに増加した。大手の借り手で3カ月支払い遅延の債務不履行の金額も、同50%以上に膨らんでいる。
就業人口の1割占める小売業に相次ぐ人員削減
米大手デパートチェーン、メーシーズは、第3四半期の売り上げが前年同期比7%減の54億9000万ドル。「これからどうなるのか、不安が募るばかり」と、カレン・ホガット最高財務責任者(CFO)は小売業受難の時代を嘆く。高級デパートのノードストロームも第3四半期の売り上げが前年比8・4%(18億ドル)減。しかも、純利益は51%も落ち込んだ。
ミドルクラスの消費者に人気のある大手百貨店JCペニーも同様で、売り上げは9%落ち込み43億1800万ドルで、純利益は53%と激減。JCペニーのマイク・ウルマンCEOは「おカネに余裕のある人も、来年以降の先行き不透明感から思いどおりに出費しない」という。