日テレ「イッテQ!」騒動に見えた致命的ミス 「文春砲第2弾」より深刻な初動対応のまずさ

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今回の騒動は、サッカーで言えば1枚目のイエローカード。もう1枚出されたら退場、すなわち番組は打ち切りか、少なくとも大幅なリニューアルを強いられるでしょう。

その意味でダメージの大きさを感じさせるのは、「祭り以外の企画でも、やらせがあったのではないか」と思われてしまったこと。特に「イッテQ!」のファンでない人は、「日本テレビは他の番組でも当然のようにやらせを行っているのではないか」とみなす人さえ現れはじめています。

どんな業界のどの企業でも、看板商品はコーポレートイメージそのものに直結する極めてセンシティブな存在。とりわけネガティブなイメージは他の商品に伝染しやすく、さらには業界全体に迷惑をかけてしまうケースも少なくありません。その意味で日本テレビは、看板商品である「イッテQ!」のリスク管理に甘さがあったのではないでしょうか。

現時点で日本テレビに求められているのは、ワンランク上のクライシスマネジメント(危機管理)。よりレベルの高いクライシスマネジメントの専門家と連携して、過去数年間に渡る番組制作を調査・検証し、速やかに改善するとともに、それをできる限り世間に公表するなどの真摯な姿勢を見せて、ネガティブなイメージの払しょくにつなげたいところです。

また、「もし番組が終了しても、『イモト ワールドツアー』や『温泉同好会』は番組として独立させる」といった最悪のケースも想定しておくべきでしょう。文春砲の第1弾、初動対応のミス、文春砲の第2弾、内村光良さんの謝罪報道とイメージは下がる一方で、いまだ下げ止まりのムードがないだけに、あらゆる事態の準備が必要なのです。

トップ企業のミスを他山の石にできるか

現在ネット上に「イッテQ!」の話題が飛び交っている一方、テレビでの報道はほとんど見られません。ライバルへの批判がブーメランのように自分のところに返ってくることを恐れているのか、それとも、世間やBPOの動きを様子見しているのか。

いずれにしても、民放他局に求められているのは、リーディングカンパニーのミスを喜ぶのではなく、他山の石にすること。視聴率という時代にそぐわない指標をベースにした収益構造が問題の根源にある限り、すべてのテレビ局が今回のような事態を招くリスクを抱えています。

今ごろ賢明なテレビマンは襟を正しているでしょうし、現場のトップから訓示や通達も出ているでしょう。テレビ業界内の視聴率争いだけでなく、ネットとの熾烈を極めるコンテンツ競争の中で生き残っていくためには、「他局の話だから関係ない」という意識ではいられないはずです。

木村 隆志 コラムニスト、人間関係コンサルタント、テレビ解説者

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きむら たかし / Takashi Kimura

テレビ、ドラマ、タレントを専門テーマに、メディア出演やコラム執筆を重ねるほか、取材歴2000人超のタレント専門インタビュアーとしても活動。さらに、独自のコミュニケーション理論をベースにした人間関係コンサルタントとして、1万人超の対人相談に乗っている。著書に『トップ・インタビュアーの「聴き技」84』(TAC出版)など。

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