日テレ「イッテQ!」騒動に見えた致命的ミス 「文春砲第2弾」より深刻な初動対応のまずさ

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ここまで日本テレビの対応を書いてきましたが、「番組制作はどうだったのか?」「やらせだったのか?」にも言及しておきましょう。

ラオスの橋祭りに関して、他局の番組制作に関わる5人の知人に尋ねてみたところ全員が、「あれは日本人スタッフが指示しないと作れない」と言っていました。会場のセットも、人の配置も、ボールを使った仕掛けも、「ラオスの人々がここまでお金をかけるとは思えない」「そういう発想は日本人しかないのでは?」という見解だったのです。

「長年、日本のテレビ局が培ってきたバラエティのノウハウが画面からにじみ出ていた」のが何とも皮肉ですが、ここまで経費がかかっている以上、プロデューサーが「知らなかった」というほうが不自然。基本的に海外ロケは、コーディネーターとのやり取りで「聞いていない」「聞いていたものと違う」などとズレが生じることが多い上に、撮り直しが効きにくいなど、スタジオ収録や国内ロケの何倍も難しいところがあります。

海外ロケには“報・連・相”が欠かせない

そのため、綿密にスケジュールや予算を組んで準備するなど、より“報・連・相”が重要なだけに、「知らなかった」というスタンスは、「嘘をついている」か、「考えられないほど管理がずさんだった」のどちらかしか考えられません。どちらにしても、世間の人々を納得させられず、番組もプロデューサーも苦しい立場に追い込まれてしまいました。

また、「高視聴率番組のプレッシャーに追い込まれたスタッフが、やらせに手を染めてしまった」という報道がありましたが、確かに日本テレビのバラエティは業界内で「構成・演出の手段が視聴率至上主義」と言われがちであり、そのひずみが表に出はじめているのかもしれません。

私は民放全局の番組に、取材と出演の両方をした経験がありますが、日本テレビのバラエティは、良く言えば「緻密」、悪く言えば「強引」。1分単位の“毎分視聴率”を得るために、コメントやアクションを詰め込み、画面の四方にテロップを入れまくり、笑いどころをたくさん作ろうとする傾向があります。そのため台本は分厚く、出演者にコメントを指定することが多く、収録時間も長くなりがちなため、知人の文化人・専門家の中には「日本テレビの番組には出ない」という人もいるくらいです。

「イッテQ!」も同様で、大量のロケをギュッと凝縮させて笑いどころを詰め込んだものを放送しているのですが、スタッフと出演者の負担が大きい制作姿勢は素晴らしい反面、「他局が模倣できないのは、それを続けていくことに無理があるから」なのかもしれません。

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