つぼ八が「やまや」の軍門に下った切実な事情 居酒屋チェーンのM&A再編が活発化する理由
つぼ八は、店舗閉鎖などのリストラを経て、2010年6月には新業態「ホルモン焼肉 伊藤課長」を投入し反転攻勢をかけた。
追い打ちをかけるように、2011年3月の東日本大震災で、大箱の収益源である宴会需要が激減、収益悪化と高齢化からFCオーナーの脱退が始まった。
つぼ八ではFCオーナーの脱退を食い止めるために、大箱のつぼ八に「伊藤課長」の併設をすすめ、複合店として集客力を上げる工夫をするなど、守りに追われた。それでもFCオーナーの脱退による減収減益に歯止めがかからず、再浮上する体力は失われていった。
今回つぼ八が、やまや・チムニーグループに売却した時点では、店舗数は最盛期の半分ほどの241店舗(直営52、FC国内175・海外14)まで縮小。8割がFC加盟店で、FCオーナー数は約140人まで減っていた。
FCオーナーの高齢化と脱退という問題
経営コンサルタントの王利彰氏は、つぼ八が売却に追い込まれたのは、「モスバーガー」(運営モスフードサービス)と同じで、「FC加盟店オーナーの高齢化が大きかった」と話す。
「個人経営店と同じでFCオーナーが高齢化し元気をなくしていたことがつぼ八の最大の問題でした。しかも後継者に恵まれず、FCを脱退するケースが増えていたのです」
古き良き時代のFCビジネスは高齢化と後継者不足という、個人店と同じ問題にぶつかり、縮小を余儀なくされているのだ。
筆者は『居酒屋チェーン戦国史』という新著の中で、居酒屋チェーンの栄枯盛衰の歴史を詳しく解き明かした。
しかし本当の狙いは居酒屋業界にはM&A旋風による淘汰・再編が起こり、勢力図が塗り替わることを伝えることにあった。その中でもやまや・チムニーグループは居酒屋業界の再編に熱心に取り組んできた。
2017年6月にも「チムニー」は、「八剣伝」「酔虎伝」などを運営する「マルシェ」と資本・業務提携を結んだ。チムニーは東京を中心とする関東圏に、マルシェは関西圏や郊外に店舗数が多く、補完関係にあった。
提携時点での展開店舗数は、イオングループ傘下のチムニーが直営・FCを合わせて746店舗、マルシェが463店舗だった。ともに一部上場の大チェーン同士であるが、この資本・業務提携はチムニーによるマルシェへの救済的M&Aに発展する可能性が高い。というのは、マルシェが苦戦しているからだ。
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